小話帳

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 基本的に書きなぐったブツの収納場所。オチのない話も有り。
 Fate(原作が18禁)とエロっちぃ話はネタバレ機能で隠してます。

  Rainy Rainy(一騎と総士)
2011/05/09 ◆ 蒼穹のファフナー
 ざぁざぁと雨が降っていた。
雨どいから落ちるしずくが、ぴちゃん、ぴちゃん、と特徴的な高い声を上げる。灰色の雨雲で覆われた島は、雨の臭いで包み込まれていた。

「暑いな」
「…何を当たり前のことを…」

 現在の気温は二十九度。酷く蒸し蒸しした日本の梅雨の暑さだ。
 冬なら凍えそうになる隙間風も、今は生ぬるい空気を運んでくるだけで、心地よい風など寄越してくれない。

「そうじゃなくてさ。こんなことやってるから」
「じゃあ止めるか?」

 気温が高いと布団に移った自分の体温すら鬱陶しく思えてくる。シーツは夏用のサラっとした手触りのものだったが、それでも大した気休めにもなってくれない。
 体温が2人分なら尚更。

「止めない」
「そう言うと思ったよ」

 雨を臨む部屋で、二つの影が重なっていた。


    =========

 またもやお蔵出し品。初めてファフナーでサークル参戦した時のペーパー用小話です。

 イベント当日の天気予報ががっつり雨だったので雨の話を書いたのですが、実際の天気は素晴らしい快晴でした。
 そりゃ雨より晴れた方が嬉しいですが、何という皮肉。
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  優先順位(一騎×総士前提の、一騎と真矢)
2011/05/08 ◆ 蒼穹のファフナー
「一騎くん!」
「…ん? 遠見?」
「あのね、今日、晩ご飯うちで食べていかない? 今日お鍋するから人数がいた方が楽しいし」
「あ、悪い。今日はちょっと。今から総士のとこ行くから」
「…そっか。じゃ、しょうがないね。ごめんね、急に誘ったりして」
「や、こっちこそごめん」
「…」
「…遠見?」
「…一騎くんってさ」
「うん?」
「ほんと、皆城くんのこと、好きだよね」
「…は?」
「…」
「…うん、まぁ、そうかな」
「…はぁ」
「…遠見?」
「何でもない。それじゃ、また明日ね」
「…? ああ、また」



「…はぁ」


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 またもや以前のペーパーから再録。手抜きですみません。

 『CHRONIC LOVE』の間章として入れようと思ったエピソード。全編を通して総士の一人称にしたかったので削りました。
 先に誘ったのが遠見さんだったら一騎も………先に誘ってても、それでも総士の方を優先するかもしれないな。だって一騎だから。
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  六花の駆け行く先、雷光が待ち受けるもの。(政宗といつき)(ノットカップリング)
2011/05/07 ◆ 戦国BASARA
「第1の門、突破されました」


 部下からの報告に政宗は鷹揚に頷いてみせた。青々とした晴天でも未だ春は遠く肌寒いどころの気候ではない、だがその様に寒さに凍えるような素振りは全く見えなかった。それは着込んだ甲冑のお陰でもあるが、それ以上に高揚した精神の影響が大きい。


(来るか)


 待ち望んでいた相手、とは言えない。本陣を、政宗を目指して一路推し進む者は、本来なら政宗が戦うべき者ではない。武器を持ち、戦うべき者ではない。本来なら農具を持ち、田を耕す、政宗が守るべき者のはずだ。
 それが様々な要因の結果、今こうして政宗の下へと向かって来ている。「かみさま」から下されたと言う巨大な槌を手にして。


「Ham,」


 そろそろ第2の門が破られるか、と心中で呟くのと、その報告が上がってきたのはほぼ同時だった。吊り上がりそうになった頬をとっさに引き締める。寸前で間に合ったはずだが、しかし傍らに控える右目は見逃さなかった。


「政宗さま」


 具体的に言葉にはせずに諫める視線だけを寄越してくる。政宗も鼻を鳴らすだけで応えた。お目付け役のお小言はとっくに聞き飽きた。
 続けて第3の門突破の報を受けて、いよいよ政宗の心は高揚する。本陣の門が破られるその時が待ち遠しく、今か今かと胸躍らせる。

 本来なら守るべき者、年端もいかぬ小娘。だが、政宗は部下たちに手加減するようになどと命令しなかった。武器を取り手を血で染める覚悟を決めて立ち向かって来るならば、それは倒すべき敵だ。敵ならば容赦はしない。立場と事情によっては恩赦を与えることもある、しかしそれは討ち倒した後の話だ。武器を向けてくる以上は容赦などしない。本陣まで、自分まで到達出来なかったのなら、それはその程度の相手だったという、ただそれだけの話だ。

 しかし、あいつは来るだろう、と政宗は感じていた。自軍と相手の戦力を計った上での予測ではなく、漠然とした予感を感じていた。無傷ではないだろう。ぼろぼろの体だろう。それでも、ここまでたどり着くだろう。この本陣、この竜の眼前まで。

 高台の本陣からは向かってくる敵の姿を遠く眺めることが出来た。政宗が鍛え配備した伊達兵を次から次へとその槌で薙ぎ払っていく小さな体。雪を纏う北の小娘の癖に内に宿しているのは炎どころではない。それは娘自身を奮起させ、娘が向かう竜をも燃え上がらせる。


「…いいじゃねぇか。来いよ、いつき」
「…政宗さま。お戯れも程々に…」
「Ah? 小十郎、お前こそ的外れなお小言は程々にしておけよ? あいつ相手にJokeなんざ不可能だ」


 高台から見える範囲から敵の姿が消えた。見えない間に倒されたのでなければ、本陣に討ち入るまでもう僅かだ。次第に大きくなる喧噪と剣戟が先触れを告げる。


「あいつは本気で真っ正面から突っ込んでくることしか知らねぇ。なら、俺も本気で相対してやる以外に選択肢なんざ無いだろうが」


 地を揺るがすような轟音を響かせて、本陣を守る扉は破られた。
 進入者は一人。雪焼けした肌の小娘ただ一人。その身に北の大地の雪を纏い、「かみさま」の下した槌を手にし、凍土の業火を宿した瞳で、真っ正面から政宗を睨みあげる。


「伊達、」


 ニィ、と政宗は笑んだ。這々の体だった。全身が傷だらけ、打撲の跡だらけ。肩の鬱血は脱臼を無理に戻した跡かもしれない。或いはまだ外れたままなのかもしれない。
 それでも、ここまでたどり着いたのだ。止めどなく襲い来る伊達兵を打ち払い、強固な門を突破して、この竜と相対する場所まで。
 娘は爆発的な加速で駆け行く。振り上げられた槌が政宗を狙う。とっさに将を守るべく反応できたのは右目のみ、しかし竜は右目の介入を許さなかった。
 神速で抜き放たれた六本の刀は竜の爪となる。


「政宗ぇぇぇぇぇぇぇ!!!」
「Come on!! Let’s Party!!」


 「かみさま」の愛し子と奥州の竜の吠吼。
 それはまるで、冬空に劈く稲妻にも似て。


     ========

 伊達いつっぽいものにチャレンジしてみたけど失敗しましたという例だと思われ。
 喧嘩ップル大好きですハイ。これ↑は喧嘩を通り越してカップルじゃなくなってますが…。

 元は某姐御への押し付け品だったりする。流用失礼。
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  『君に捧げる春恋歌』のおまけペーパー
2011/05/04 ◆ 蒼穹のファフナー
 2011年5月3日で配布したペーパーです。
 『君に捧げる春恋歌』のオマケを載せていたのですが、途中で無くなってしまい…大変申し訳ないことをしました。



【 後書き代わりのQ&A 】

※『君に捧げる春恋歌』のネタバレです。
 読後にお読みください。


Q1.
 タイトルは何て読むの?
A1.
 『きみにささげるしゅんれんか』です。
 「きみ」は「貴方」と言う2人称の意味と、今回総士が王さま役なので「君(=君主)」の意味とを掛詞にしています。
 「しゅんれんか」は「はるこいうた」と読んでも問題はありません。何となく「しゅれんか」の方が語呂がいいかなーと思った程度ですので。
 ちなみに『春恋歌』は造語のつもりだったので、後にそういうタイトルの歌があると知って驚きました。知らずに付けたタイトルですので、同タイトルの曲との関連性はありません。


Q2.
 総士の近習って誰だったの? もしかして操?
A2.
 ご想像にお任せします。
 行洋と操のどっちの方がいいかなー、と悩んだ結果、ああいう描写になりました。


Q3.
 パロディ元と比べて極端に登場人物が削られているみたいだけど?
A3.
 話の構成上仕方のないこととご理解ください。
 原作の主人公は占者の世話係の女の子で、後に恋仲になる占者を助ける為に奮闘するお話です。王さまと占者は古い友達です。
 占者は主人公と恋仲に、王さまには王妃がいるので、原作通りの登場人物で話を進めるのは不可能でした。占者が王さまを口説きまくるあのシーンを一騎と総士で書きたかったので、その為に主人公の女の子を乙姫に配役して占者との恋仲は無しに、王妃はいないことにさせて頂きました。


Q4.
 総士が中継ぎの王ってことになってるけど、原作ではそんな設定はなかったよね?
Q4.
 中継ぎでなく普通に王位を継いだ王なら必然的に跡継ぎが云々という話になってくるので、総士は王妃を迎えないで一騎と一生ラブってろ!というフラグのつもりで書きました。


Q5.
 総士も出て行っちゃって、残された子供たちはどうなったの?
A5.
 子供たち、と言っても、本当に小さかったのは皆で暮らし始めた頃で、総士が出た時点で皆10代後半〜10歳前後まで成長しています。大人が少ない村ですので10代の子供でも仕事の口は多く、それぞれが仕事に就いて日々を暮らしています。10歳前後の小さい子のお仕事は家事のお手伝いです。
 ちなみに一騎が連れて行かれた時に役人が置いていったお金は、今も誰も使っていません。
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  二律背反(一騎×総士前提の溝口と真矢)
2010/12/30 ◆ 蒼穹のファフナー
 『HEAVEN AND EARTH』後の話になります。
 特にネタバレというほどネタバレはしてないのですが、一応隠しで。

「あーあ」
「何ため息ばっか吐いてんだ、嬢ちゃん」
「…はぁ。
 …一騎くん、前にも増して、皆城くんにべったりになっちゃってるんだよね。勿論私だって、皆城くんが帰ってきてくれて嬉しいよ? 嬉しいけど…」
「嬉しいけど、複雑ってか。まぁ、嬢ちゃんにとっちゃ、強敵が戻ってきたってことだからなぁ。
 …で、何でそんな愚痴とため息を俺のところで漏らすんだ?」
「えー、だって暇でしょ? 店長なんだからバイトの愚痴くらい聞いてくれてもいいと思うんだけど」
「ったく。くだを巻いてる暇があったら、直接一騎に言って来いよ」
「直接って、何を?」
「最近皆城くんばっかりに構ってて寂しい、私も構って、ってな」
「…!? そっ、何それ! そんなの言えるわけないでしょ!? ていうか直接すぎ! いくら何でももうちょっと言葉を選んでよ!?」
「いや、こういうのはストレートな方が男心にぐぐっと響いたりするもんなんだぜ?」
「…溝口さんは響いたことがあるの?」
「あん?」
「そーゆーこと、言われたことあるの?」
「さてなー。そいつは秘密だ」
「…ずるい。私には言えって言う癖に、自分は秘密?」
「大人ってのはずるいもんよ」
「もー。
 …言わないからね」
「張り合いがねぇなぁ。若いんだから一発ドカンと体当たりしろよ」
「言っても意味ないもん。そーゆーの言ってドカンって来るのは、好きな女の子に言われた時だけだよ」
「…あー(何でそーゆーところは聡いのかねぇ…。子供でも女は女ってか?)」
「それにさ、私よりも皆城くんに言われる方が効果ありそうだよね」
「…いや、さすがにそれは…。総士の方が言わねぇだろ、そんなセリフ…」
「うん。私もそう思うけど。でももし本当に言ったら、多分ものすごくドカンって来るよ」
「…(否定…出来ねぇなぁ…)」
「一騎くんってほんと、皆城くんのことが大好きだよね」
「…いや、嬢ちゃん。そーゆー誤解を招く言い方は…」
「皆城くんもほんとに一騎くんが好きなんだから。もういっそ結婚しちゃえばいいのに」
「おーい嬢ちゃーん。自棄になってねーで帰ってこーい」


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 帰ってきてくれて嬉しいけど、一騎を独占されるのは悔しい。
 一騎を独占されるのは悔しいけど、総士と一緒の一騎はすごく幸せそうだから嬉しい。

 なんて苦い二律背反。
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