feier




「あ」
「…? どうした」
「いや、今日12月27日なんだな」


 忘れてた、と一騎は顔を上げた。ばつが悪そうに眉を顰める一騎に、総士は再度どうしたと問う。


「どうしたって、誕生日だろ。お前の」
「…ああ、そうだったか」
「他人事みたいに言うなよ」
「誕生日を祝う習慣がなかったからな。あまり実感が湧かない」
「そんなものか?」


 いくら疎遠にしていたとはいえ、生前の総士の父と総士が親密な親子関係を築いていたのではないと一騎も聞き及んでいた。あまりそういったイベントごとはしなかったのかもしれないし、一騎自身、父と2人暮らしではあまりイベントごとはしていない。真矢などは家族総出で祝っていたらしいので、やはり家に女性がいるかいないかでイベントごとは大きく違ってくるものだ。


「誕生日おめでとう、総士。…何か変な感じだけど」
「改めて言われるとな。ありがとう、と言っておくよ」


 どちらともなくぎこちない微笑を浮かべて2人して笑った。
 いざ改めて言うと、何処となく恥ずかしい気がする。


「…プレゼント、何も用意してなかったな。ごめん」
「構わない。僕も一騎の誕生日には何もしなかった」
「そうだったか? …覚えててもくれなかったのか、総士」


 一騎にしては珍しく、恨めしそうな声音。流石に悪いと思ったのか、総士は素直にすまないと詫びた。そのしおらしさは一騎にも意外だったのか、一騎はくすりと喉を鳴らした。


「冗談だって。俺も今まで忘れてたし」


 だからお互いだな、と一騎は言う。


「プレゼントはないけど、夕飯は総士の好物を作ろうか。何が食べたい?」
「…和食よりは洋食がいい」
「了解。考えておく」
「ああ。楽しみにしている」







「プレゼントはないけど、夕飯は総士の好物を作ろうか。何が食べたい?」
「…何でもいい」
「その『何でもいい』ってのが1番困るんだけどな」
「そうなのか?」
「毎日献立を考えるのって結構面倒なんだぞ」

 というバージョンも考えていたのですが、
あまりに一騎が主婦臭かったのでやめました(笑)




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