1/3の純情な感情・2
「けっこん?」
「おう」
久しぶりに顔を見せてくれたリボーンが言い出した単語を、オレは馬鹿みたいに繰り返した。
「オマエもとっくに20歳越えてんだ。いい加減に嫁の1人や2人もらえって話が出てるぜ」
「いや、嫁の1人や2人って…嫁は1人じゃないとマズイだろ…」
何でも幹部の間でそーゆー話が出てきているらしい。わざわざ要らない情報を教えてに来てくれた…だけ、でもないみたいだ。ご丁寧に嫁候補のリストまで用意してくれてるよ。
幹部連中のお勧めってだけあって、あっちのファミリーの1人娘だとか、そっちの大富豪の姪っ子だとか、そーゆーラインナップがずらりと。
…ご丁寧にって言うか、嫌がらせだろコレ。
「って言われてもさー…。結婚する気なんてないよ、オレ」
「マフィアのボスなら跡継ぎを作っとくのも義務の1つだからな」
「跡継ぎって言うけど、オレはボンゴレを継続させる気はないんだって。リボーンも知ってるだろ?」
「まぁな」
ニヤリ、って分かってて笑うんだから、まったくタチが悪い。
一応今は時期十代目ってことになってるけど、オレはこのままマフィアのボスを続ける気はない。未来で初代にボンゴレをぶっ潰すって叫んだのを実現させるつもりだ。でもボンゴレの構成員を皆殺しにするわけにもいかないから、平和的に内部からゆっくり解体していこうってことにした。
だからオレが十代目になるのはいいとしても、跡継ぎが必要になってくるなんてことはありえない。大体、跡継ぎが必要だから結婚するって、順番が逆だろ!
「とにかく、オレは結婚なんてするつもりないから。誰が言い出したのか知らないけどそう言っといてよ」
「するつもりはない、で納得させられる訳ねえだろ。いっそ獄寺と熱愛宣言でもしたらどうだ?」
オレは獄寺君(性別♂)が好きなんで、女の子と結婚はできませーん、って?
「…さすがにそれはムリ。第一、獄寺君が承諾しないよ」
「まぁな。むしろオマエの結婚の方が喜ぶんじゃねぇか?」
「…」
否定できないのが痛い。痛すぎる。
いやでも、クロームがオレにキス(ほっぺたに)した時は怒ってたし。結婚なんてことになったらもっと…
…「つまんねぇ嫉妬なんてしてる場合じゃねぇよな。十代目がお幸せになるんだし、盛大に祝福してやるぜ!」とかそーゆー風に、勝手に悩んで勝手に納得して自己完結するのが目に見えるようだよ…。
「あーもー…。ホントに手ごわい…」
机に突っ伏してたら、リボーンが笑う気配を感じた。他人事だからって笑ってないで、ホントに何とかして欲しい。
オレがどれだけ言葉にしても態度に出しても、オレの想い人にはちっとも伝わらないんだから。