1/3の純情な感情・4





 どうにかなるだろ、って軽く考えてたのはいつまでだったっけ。


 行為そのものに慣れても行為の後のダルさは消えない。コップ一杯飲んだ程度じゃ喉も渇いたままだ。ああ、結構啼かされたもんな。
 はぁ、って溜息を吐いたのは、体の疲れよりも精神的に疲れたからだった。


「…まいったな」


 またいつもの展開だ。
 好きだって言っても通じない、体を繋げても関係ない。
 まったく、どうしてこんなに頑固なんだろうね?
 オレが獄寺君に言ってる「好き」はボスから部下への親愛の情なんかであるはずがないだろ。
 好きでもない相手と寝たいなんて思うわけないだろ。しかも、男同士で。


「十代目、風呂どうぞ」
「…ん」


 促されたまま風呂に向かった。冷房が効いた部屋でもやっぱりあんなことをしてたら汗をかく。体にこびりついてるのは汗だけじゃないし。
 シャワーのコックを回してやっと、オレは盛大に溜息を吐いた。下手に獄寺君の前で吐いたらまた何を見当違いな心配をされるか分かったもんじゃない。…って、あ、さっき吐いちゃったっけ。…ま、いっか。


「オレは恋愛感情で君が好きなんだけどねー…」


 そうはっきり言ったこともあるのに、「またまたご冗談をー」で終わらせられた。
 呟いた声は水音で掻き消される。わざとお湯にしないで火照った体を冷やした。どうせ水風呂に浸かっても風邪を引くような季節でもないし。

 ぶっちゃけ言って今のオレと獄寺君の関係は、愛人関係だ。体の関係はあるけどその間に恋愛は芽生えてない以上そう言うしかない。
 オレはさっさと恋愛も芽生えさせようと努力してる…んだけど、全然効果なしで。獄寺君は今の状態に違和感も何も持ってない。…いい加減に腹が立ってくるくらいに。
 …て言うかさ、獄寺君。自分は愛人の子供ってことで色々とイヤな思いもしてきてるのに、自分が愛人になるのは構わないの? そりゃオレ達なら子供は出来ないけどさー…。


「まいった」


 いい加減に獄寺君の頑固な思い込みには腹が立ってきてるのに、それでも好きだって思う気持ちは治まってくれやしない。
 いっそ本当に子供でも出来てくれたら責任を取る名目が立ってくれるのに。







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