端末に電源を入れるとすぐに目的のデータが表示された。 総合的な評価は今回もAAをマークしている。が、前回のデータと比較すると射撃の精度が落ちていた。データ上では変わらないが、反応速度も落ちていたような気がする。 ――少し鈍ったか。 無理も無いことだ。一通りの訓練は続けていると言っても長く実戦に出ていないのだから。射撃や体術ならともかく、MSは殆どシュミレーションしか触っていない。勘が鈍くなって当然だ。 しかしカガリの護衛をしている以上、そう甘えていられないのも事実だ。 「うわ、凄いねアスラン。評価値ずっとAAじゃないか」 「――キラ?」 いつの間に来ていたのか、キラが端末を覗き込んでいた。手を差し出されたから端末を渡す。色々操作しているのは前回、前々回の詳細なデータにも目を通しているのだろう。 「初回から、か。凄いね。ずっと訓練は続けてるんだ?」 「当たり前だろう。せっかく身につけた技能を腐らせてどうするんだ」 「そう? 僕は全然やってないよ。――フリーダムを降りてから一度も」 何でもないように言うキラの顔が曇って見えたのは、俺の気のせいじゃないだろう。 「今君と模擬戦をしてもあっさり負けるだろうね。ブランクが1年もあるから」 「…ああ、そうだな」 キラは今、マルキオ導師の手伝いのようなことをしている。 ヤキン・ドゥーエ攻防戦の後、キラは一切MSに乗っていない。かつては戦場で一級のパイロットだったが、丸一年もシュミレーションすら行っていない以上、前と同じ動きなど望みようがない。 訓練を続けている俺と、そうでないキラと――結果は目に見えている。 だが、キラはこれで良いのだと思う。キラは今、兵士ではないのだから。 「する必要がなければすぐにしなくなるな、お前は」 「あ、酷い。いいじゃないか、別に。 …しない方が、いいじゃないか」 苦笑混じり、冗談交じりに言っても、互いの奥にある闇は隠せない。 ――キラは今、MSに乗らない。乗らなくていいから、乗らない。 それでいい。それがいい。 キラがもう1度MSに乗る時など来なくていい。 平和ならMSなど必要ない。 MSが必要な世界など悲しいものでしかない。 だからこのまま、 「僕はもう必要ない――それでいいんだよ」 このまま時に任せて、朽ちてしまえばいい。 戦う力など不要なままであればいい。 |