アスラン・ザラとカガリ・ユラ・アスハ、ついに結婚!



 アスラン・ザラ氏は元プラント最高評議会議長パトリック・ザラ氏の1人息子であり、元ザフト軍のエースパイロット。クライン派に属してからは戦争終結のために奮闘し、停戦後は戦後処理に奮闘している人物だ。そして花嫁のカガリ・ユラ・アスハ嬢は『オーブの獅子』ウズミ・ナラ・アスハ氏の1人娘であるオーブ首長国連邦の姫君。戦時は自ら前線に出て戦争終結を目指し、停戦後はオーブの復興と戦後処理に活躍している。

 この2人は戦後すぐからその関係を噂されており、正式に婚約したのが停戦から2年後。当時から美男美女で見目麗しいお似合いのカップルだった。戦時中での出会いと交際には何らかのラブロマンスがあったと推測されるが、未だその馴れ初めは語られていない。
 カガリ嬢の補佐役で兄代わりのレドニル・キサカ氏のコメントでは、「あの小さなお転婆姫がついに結婚となると、嬉しさよりも寂しさの方が強く感じてしまうな」とのこと。

 挙式は×月×日午後一時から、×××ホール。披露宴は同ホールにて4時からの予定。心身ともに美しく成長したカガリ嬢のウェディングドレス姿が非常に楽しみだ。

 ナチュラルとコーディネーターの結婚は、政府関係者ではこの2人が初めて。停戦協定を結び平和への道を歩もうとしている昨今ではあるが、未だ同者間の確執は消えない。この2人の結婚がナチュラル・コーディネーター間の架け橋となってくれることを切に願う。



 『週刊ナイン』17号6〜9ページより抜粋




 くすり、とキラは手にしている雑誌を置いた。
 キサカさんのコメントはもう兄代わりというよりも父親代わりのようだ。実際アスランはキサカさんのさり気ない(?)妨害にあって何度か痛い目を見たらしいが。


「何を読んでますの、キラ?」
「ああ、ゴシップ誌だよ。アスランとカガリの結婚式の記事が載ってるから」


 ほら、とラクスにそのページを開いて見せる。巻頭カラーに飾られたそのページは主に2人のツーショット写真が面積を占めていた。
 殆どがドレス姿の写真のカガリを見て、カガリさん綺麗ですわねと呟きながら、ラクスが嬉しそうに微笑む。ピンクの丸い物体もぴょんぴょん飛び跳ねて雑誌を覗き込もうとしているが、いくら何でもハロには記事は読めないだろう。

 花のような、と評される微笑を浮かべて記事を眺めていたラクスだが、ふいに。
 ふいに、顔を歪めた。
 泣きそうな、でも泣けない。どうしようもない遣る瀬無さを表に出して。


「ラクス…?」
「…橋に、なれたら良いですね」
「え…?」
「この記事にあるように。アスランとカガリさんの結婚が、橋になってくれれば…」


 戦争は、終わった。


 しかし地球とプラントが仲良しになったと言うわけではない。
 未だブルーコスモスはゲリラ活動を続けているし、プラント内でも主戦派の存在は残っている。一般人の間でもまだわだかまりが消せないでいる。
 ナチュラルだから。コーディネーターだから。そう生まれてきた人たちにはどうしようもない理由でいがみ合いたくはないから。


「…決して役割を押し付けるつもりはないのですけれど、でも…」
「…うん。そうだね」


 相愛の友人たちの結婚は、同時に政治的にも非常に都合のいい結婚だ。
 プラントとオーブ。コーディネーターとナチュラル。太古から結婚は相対する二つの勢力を親密にするための道具とされてきた。
 ――政略結婚。
 この2人の関係もその為の偽装なのではないかと疑う声もある。確かに本人たちが望んだことだというのは、自分たちが一番良くわかっているけれど。


「…行こうか」


 キラは手を差し出した。


「…はい」


 キラの手を取る時にはラクスの翳りは消えていた。たとえ内に潜むものを抱いていようとも、今日は大切な友人たちの晴れ舞台だ。2人が幸せになるように、最高の祝福を与えたい。

 だから微笑って。最高の、極上の笑顔を見せて。
 心から「おめでとう」と。



 もう二度とその笑顔が曇らないことを祈って。







冒頭のゴシップ記事が
書いてて物凄く楽しかった。


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