「どうして私が好きなの?」
「…はい?」
ぽかん、と口が開けっ放しになった間抜けな顔すらも憎らしい。
あいしてる?
―――― ディアッカとミリアリアの場合
「えーと、ミリアリアさん? どうしてって、何でまた」
そんなこと、って言うディアッカを、つい反射的に睨んでしまう。ディアッカはいつもの仕草でひょいって肩を竦めた。
「だから理由が聞きたいの」
「理由って言われてもなァ…」
好きなもんは好きなんだしって言うけど、そんなのじゃ納得できない。口元に手をやって考え込む、そんな仕草も絵になっていて。…本当に、何でなのか分からない。
出会いは最悪だった。私を彼を殺そうとすらした。そのディアッカが、どうして私を好きになんかなったの。
「んー…。そうだな。
あのさ、ミリィ。お前恋人いたんだよな?」
「いたわよ、それが何?」
それからミリィって呼ばないでって、何回目になるかも分からない文句を言う。
まあまあってディアッカが流すのもいつものこと。
「そいつもミリィのこと好きだったんだろ。じゃあそいつは、どうしてミリィが好きだったんだ?」
「え?」
とっさになんか、答えられなかった。
「どうしてって…」
トール。
優しい人だった。友達思いの人だった。
戦争なんか大嫌いだけど、キラにばっかり押し付けているのが心苦しくて、出撃して
――そうして死んでしまった。
好きだった。とても大好きだった。
「…トールは…」
好きなんだって言ってくれた。顔を真っ赤にしてて、私もすぐに真っ赤になった。トールが私を好きだって言ってくれたのが嬉しくて嬉しくて、すぐに私も好きって答えた。早くトールに自分の想いを知ってほしかった。
だって、好きだったから。トールが好きって言ってくれたことだけが大切で、「どうして」なんか考えたこともなかった。
「…知らない…。そんなこと…」
「…考えたこともなかった?」
こくんって返事の変わりに首を落とす。ディアッカは、そっか、なんて呟いてた。
「多分、同じだと思う」
「同じって、何が?」
「ミリィを好きな理由。そいつと、俺とさ」
ディアッカはちょっと困ったみたいに笑ってた。私はやっぱり意味が分からなかった。トールと同じだって言う理由も、どうしてディアッカがそんな風に笑うのかも。
「ミリィがミリィだから好きになったんだ、他に理由なんか要らないだろ?」