郷愁
自分1人になってようやくパトリックは深い息を吐いた。自然と重くなったことに自分で驚き、しかし表面には出さずに執務机に腰掛ける。自動的に設定していたブラウザが起動して低い稼動音の揺らぎが耳を突いた。 パトリックがすべき仕事は多い。プラント最高評議会議長としての執務、国防委員長としての執務。差し当たっての急務と言えば、シーゲル・クラインを始末してもなお活動を止めようとしないクライン派の特定とフリーダムの奪取、そして――ジャスティスの奪取。 雑務を2、3件片付けて、ようやくパトリックは机上に足りなくなっている物に気付いた。 机の前に落ちていたそれはガラス面にひびが入っていた。おそらく落下の衝撃で割れたのだろうが、一体何時落としたのか、パトリックには思い出せなかった。 最後に目にした時間を辿ってすぐの思いつく。落としたのは確実にあの時だ。 ぎ、と奥歯が軋んだ。あの時彼は確かに気が立っていた。人も多く出入りしていた。こんな些細なことに気付かなくてもおかしくない。おかしくないが、パトリックの気に障った。 ガラス越しに見つめてくる写真は2人して微笑んでいる。4年前の姿の妻と息子。 あの頃のパトリックは幸せだった。――そう、幸せだった。 プラントが国家として独立する為、テロ活動を続けるブルーコスモスに対抗する為、多忙な日々を送っていたが確かに幸せだったのだ。 あの頃は妻がいた。あの頃は息子がいた。ともに暮らしてはいなくても、それでも彼の傍に。 「…レノア」 ひび割れてしまったモノは直せない。 声にならない声すら彼に当たり前の事実を突きつけるばかりで、握った拳の強さだけが現実の痛みだった。 後書きと言う名の余計なコメント。 えーと、我ながら何故に今頃になってパトリックさんのお話?と思わないでもないです。 まぁぶっちゃけた話、昔書いたけどアップし忘れてたブツが発掘されただけなんですが。 パトリック×レノアなのにアイコンがアスランなのはレノアさんのアイコンが無かったからです。うわーん、ザラママー!(涙) この2人だけ向かい合っていないのは勿論わざとです。…向かい合って欲しかったなぁ…。 |