小話帳

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 基本的に書きなぐったブツの収納場所。オチのない話も有り。
 Fate(原作が18禁)とエロっちぃ話はネタバレ機能で隠してます。

  raison d'etre(ツナと獄寺)
2012/01/27 ◆ リボーン
 不意を突かれた襲撃。
 至近距離で撃たれた弾丸。
 こめかみから流れる血。
 倒れる体。
 閉じられた瞳。

「10代目…!?」


 いつどんなきっかけでそういう話になったのかは覚えていない。確か言い出したのは山本だった。

「オレの怖いもの?」
「バッカやろ、10代目にそんなモンあるわけ、」
「いっぱいあるよー、リボーンの説教とか。お化けも怖いし。追試も怖いなー」
「ああ、追試は怖いよな。オレも怖い」
「だよねー」
「…10代目は素直なお人だ…! ご自分の弱い所も素直に認められるんですね!」
「そーゆーのじゃないと思うけど…。
 獄寺くんは? 怖いものってある?」
「は? オレですか?」
「うん、獄寺くん。追試…は怖くないよね。頭いいし」
「…。特に、思いつきません。姉貴は怖いっつーか苦手っつーか…」
「恐怖の対象っつか、天敵?」
「あーそんな感じだよね。オレもポイズンクッキンは怖い」
「あれはマジ生命の危機だよなー」


 あの時は本当に、怖いものと言われても思いつかなかった。
 だけどそれは、あの頃のオレに怖いものが無かったからじゃない。知らなかっただけだ。自分が怖いもの。本当に怖がっているもの。何よりも怖ろしいもの。それが何なのか。


「獄寺くんってさ」
「はい、何でしょう」
「自分がケガするのは結構平気なくせに、オレがちょっとでもケガしたらすぐに狼狽えるよね」
「それは勿論。10代目のお体のことですから!」
「オレとしてはもっと自分を大事にして欲しいんだけどね、獄寺くんにも」
「自分がケガするより、10代目のご無事の方が大事です」
「ほらまたそーゆーこと言う…」


 10代目は呆れる。自分を大事にしてない、と怒る。
 でも、こればかりは仕方ない。本心なのだ。
 10代目はオレの全てで。10代目の為に生きるのがオレの存在意義で。10代目がいなくなったらオレがいる意味が全部無くなってしまう。
 オレが死んでもオレが死ぬだけ。だけど10代目が死んだらそれだけじゃ済まない。だから、オレがオレよりも10代目を大事にするのは当然のことだ。

 いつか聞かれた時には答えられなかった問いかけの答えを得た。あの頃オレは他の何も代えられない絶対的な唯一のものを既に見つけていた。ただ気付いてなかっただけなんだ。
 誰より大事で、誰より敬愛して、誰より必要としている。この人がいなくなることが、何よりも怖いと。



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 獄→ツナ的「まんじゅうこわい」
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  デンジャラス・ビューティー その5(ツナと獄寺)
2010/11/05 ◆ リボーン
 獄寺女体化シリーズその5。
 その1・2の後くらいの話です。

 豪華絢爛って言うのが相応しいホールには100人は軽く超える大人数が集まっていた。それだけの人数がいるにも関わらずホールが狭いという感じは全然ない。つまりそれだけ広いってことなんだけど。
 ワルツに合わせて踊る人が半分くらい。残りは談笑してる人がほとんどで、その談笑の内容って言うのが、男が女を口説いてるっているのが大半だ。手練手管を駆使して女性に話しかけて、上手く行ったらワルツに加わる。失敗したらまた別の女性を見つける。

(すごいよなぁ…)

 何であんなにエネルギッシュにナンパし続けられるんだろう。振られたらあっさりはい次って切り替え良すぎだろうに。その切り替えだって適当に目についた女性なら誰でもいいって訳じゃないんだもんな。いつでも口説く相手には直球で本気になってるんだから、ほんとにイタリア男ってすごい。

「10代目? こんな端で何なさってるんですか?」
「あ、獄寺くん」

 こういう夜会とかパーティとかいう場にはそれなりに慣れたけど、やっぱり自分が似合うとは思わない。目的の商談が終わった後は自由行動な時間で、ボンゴレのボスっていう立場の人間にすり寄りたい女の人がやってきたりもしてたんだけど、今オレは壁の花になってた。
 …いや、花じゃないけど。オレ男だし。

「何もすることないから、ぼけーって突っ立ってた。獄寺くんは? 用事は終了?」
「はい、滞りなく」

 獄寺くんは普段はこういう場にもスーツ姿で来ることの方が多い。けど、今日はオレの希望でばっちりドレスを着てる。この前囮をしてもらった時のドレスアップ姿がまた見たいな、ってお願いしたら、結構あっさり聞いてくれた。ちょっと照れくさそうにしながら、だけど。…そういうところ、可愛いよね。

「それより、さっきまで身の程知らずな女たちに群がられていましたよね? 全員追っ払ったんですね、流石です!」
「いや追っ払ったって言うか、自然に離れて行ったって言うか。ほらオレって気の利いた口説き文句の1つも言えないからさ」

 イタリア男の口説きテクニックに慣れてるイタリア女性にはロクに褒め言葉の1つも言えないオレなんて問題外だ。ちょっと話しただけですぐに見限られた。ま、オレはその方が助かるんだけど。こんなパーティーで出会った女の人を口説くつもりなんて更々ないんだから。

「…口説き文句を言えるか言えないか程度で男の価値を決めるなんて、下らない基準です」

 『ボンゴレのボス』が目当ての女性が群がってたのにイラついて、そういう女性がオレを見限るのにもイラついてるみたいだ。
 獄寺くんの基準はいつも『オレ』だ。怒るのも喜ぶのも、――男の価値も。

「それじゃ、獄寺くんはオレの手を取ってくれる?」
「…」

 差し出された手にちょっと吃驚したみたいで、獄寺くんはオレの顔と手を交互に視線をきょろきょろさせた。オレは手を取ってくれるのを根気強く待つ。
 …イタリア男ならこういう時にまた何か女性を褒める言葉の1つや2つがスラスラと出てくるんだろうな。
 でも生憎とオレは日本生まれ日本育ちの朴念仁で、イタリア男じゃない。好きな女の子を褒める言葉も中々言えない。
 それでも、オレを選んだのは獄寺くんだ。

「…はい」

 その手は躊躇いがちにだったけど、確かにオレに差し出された。
 はにかんだ笑顔にオレが言えたのは、かわいいよ、なんて月並みにも程がある言葉だったけど。獄寺くんは物凄く嬉しそうに、物凄く可愛らしく、ありがとうございます、って満面に微笑んでくれた。


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 イタリア男の口説きテクニックは本当にすごいらしいです。
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  PLEASE CALL ME?(ツナと獄寺)
2010/05/02 ◆ リボーン
「あのさ、名前で呼んでみてよ」
「? はい、10代目」
「いやそうじゃなくて。名前『を』、じゃなくて、名前『で』。まさか名前忘れたとか?」
「まさか! そんなことありえません!」
「だよね。じゃ、言ってみて」
「え」
「沢田でも綱吉でもツナでも何でもいいよ」
「…10代目」
「だからそれ名前じゃないから。何でもいいって。…あ、でも母さんの呼び方はアウトね。いい加減にやめて欲しいんだけどなーあれ」
「…」
「考えてみればさー、うちの連中ってことごとくオレのことボスって言わないよね。沢田綱吉ってフルネームだったり沢田って呼び捨てだったりさ。あ、クロームはボスって言ってるっけ」
「…」
「で、獄寺くん。呼んでくれないの?」
「…あの、」
「うん」
「………ツナ…」
「………」
「…あの、10代目。どうされたんですか? やっぱり失礼だったかと…10代目?」
「………どうしよう」
「え、あの、何でしょう! 10代目!?」


「………予想以上にキた………」


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 どこに何がキたんだか。
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  ROOKIES(ツナと獄寺)
2010/04/30 ◆ リボーン
 ぽた。雫が落ちる音。
 ぱち。小火がはぜる音。
 周りの惨状に目をつってそれだけを聞いていたら、どこかのメルヘンに迷い込んだみたいだ。

「10代目っ、お怪我を!?」
「あーうん、オレは大丈夫。ちょっと焦げてるけど骨とかは無事だから」
「ちょっとって…全然ちょっとじゃないでしょう! 今すぐ手当てを…」
「大丈夫大丈夫。オレより皆は?」
「…全員無事です! 10代目が庇ってくださいましたから!」
「そっか。良かった」
「全然良くありません!」

 爆風の殆どは上空に逃がせた。元々ガタが来てた建物はかなり倒壊してしまってるけど、幸いこの辺りは取り壊しが決まってる地区だから、解体の手間が省けたって思うことにする。
 さっきまで降ってた雨はいつの間にか止んでいた。…まさか爆風で雨雲が吹き飛ばされたってことは…さすがにないと思うんだけど。いくら何でも雨雲に届くほどじゃなかっただろ。
 起き上がろうと思って腕に力を入れたら、思いがけない激痛。あ、やばい。骨は無事でも筋を痛めたかも。骨より筋の方がヤバイよなぁ。
 どうぞ、って差し出された手の持ち主は、それはそれは心の底から激怒してた。

「ボスを守るのが部下の役目です。ボスが部下を守ってどうするんですか!」
「別におかしいことじゃないと思うけど。部下を危険にさらして自分はぬくぬく守られてる奴なんてボスの資格ないよ」
「貴方のどこがぬくぬく守られてるボスですか! たまには守られて下さい、いつもご自分が率先して突っ走るじゃないですか!」

 獄寺くんがオレに説教できるようになったのっていつくらいだったっけ。昔はハイハイってオレの言うことに従います!ってばっかりで、…イエスマンなんて要らないって本気で思ったよ。
 怒ることも時には必要って学習してくれて、その後からだと思う。本当にオレが獄寺くんを頼れるようになったのって。立場はボスと部下だけど、気持ち的には対等に立てたと思った。
 …意外と細かい所までお説教をするようになっちゃったから、それはそれで面倒になっちゃったんだけど…。

「10代目?」
「あーはいはい聞いてます聞いてます」
「…」

 素直に手を引いてもらって立ち上がった。脚は問題なさそう、だ。
 近くなった顔はやっぱり怒ってて、…でも、すぐに伏せられてしまった。

「獄寺くん?」
「…申し訳ありません」
「え、何」
「もっと警戒しておくべきでした。そうすれば10代目に、こんなお怪我を…」
「や、違うって。仕方なかったよあれは。オレもまさかあんなタイミングでミサイルをぶっ放すなんて思わなかったし」

 話し合いだけの予定だった。予定は未定ってことで、要するにあっさりと喧嘩を吹っかけられた。血気盛んな連中ってのは分かってたけど、まさかオレたちと10メートルも離れてない状態で対戦車ミサイルを撃ってくるなんて。オレたちどころか自分たちも一緒に死ぬ距離だぞ。
 何とか対処は出来たわけなんだけど、結果的に建物倒壊、全員ぶっ飛び。オレはちりちり焦げました、ってことだ。

「申し訳ありません…!」
「いや、だから…」

 何かもう土下座してないのが不思議なくらいの謝りっぷり。
 …獄寺くんには悪いんだけど、ついつい吹き出してしまった。

「…10代目?」
「ごめん、ちょっと…昔の君を思い出しちゃって…」
「…はい? 昔のオレ、ですか?」
「オレがちょっと怪我する度に大袈裟に騒いでたなーって」
「…」

 あの頃は大丈夫だから、大袈裟だから!って言って落ち着かせてたけど、今になるとあの頃の必死さが懐かしい。
 獄寺くんはちょっとばつが悪そうに頬を掻いた。けどすぐに真顔に戻す。遠く、サイレンの音が聞こえた。

「10代目」
「うん」

 さすがに誰かが通報したんだろう。警察に捕まると面倒だから、三十六系逃げるに如かず、だ。
 ミサイルをぶっ放してくれた連中は獄寺くんと喋ってる間に他の部下がとっくに確保してくれていた。幸い車は動ける程度には無事だったらしいから順に乗り込んで発進していく。
 オレたちが全員離脱するのとパトカーが到着するのはほとんど同時だった。

「交渉は決裂、手打ちはこれから。みんなに怪我はないけどオレは火傷だらけ――か。あーあ、リボーンの採点が怖いよ」

 どんなに楽観的に考えてもいい点数は取れそうにないな、って1人ごちたら、獄寺くんが「大人しく怒られてください」ってぼそって言った。
 …まだ怒りは継続中らしい。こっちはこっちで怖いんだよなって思ったけど、さすがに口には出さないでおいた。


 …獄寺くんの仏頂面が酷くなったから、顔には出てたのかもしれないけど。



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 未熟者奮闘記。
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  白刃の先(山本とスクアーロ)
2010/04/29 ◆ リボーン
 視察に来たビルの前で車から降りた。
 大きな噴水がある広場に面したビルで、広場ではわいわいとガキが何人も走り回っていた。ガキを嗜めながらも微笑ましそうに眺める母親たちがいた。至って普通の広場の風景だった。
 ガキの1人がこっちに走ってきた。
 そのガキは確かにガキだったんだけど、せいぜい10歳になるかならない程度だったんだろうが、その手にはナイフが。
 ナイフの先には、オレたちのボスが。

 斬。



「沢田のガキが襲撃されたんだってなぁ、オイ」
「情報早いなー。今日の昼の話だぜ、それ」
「ヴァリアーの情報網を舐めんじゃねぇ」

 向かい合わせのソファに座る2人の間、畳一畳分はありそうなローテーブルの上には、所狭しと酒類とつまみが並べられていた。
 酒は山本の好みで日本酒、つまみはスクアーロに合わせて魚介類がメインになっている。大皿には山本自身が市場で調達してきて捌いたまぐろの刺身が並んでいた。

「前に潰したファミリーのボスの息子? 相変わらず甘ぇな、潰す時はガキだろうが何だろうが皆殺しにしろっつーんだよ」
「その方が後腐れがないってか? ムリだなー、オレのボスはそーゆーの嫌がるからよ」
「はん」

 スクアーロはグラスを放棄した。清酒の瓶を掴んでそのまま口にする。半分以上は残っていた中身が瞬く間に彼の胃に収まった。
 豪快だなーと眺めつつ、山本は別の瓶の封を切った。

「そのガキ、本当に自分の意志で狙いに来たのか?」
「さぁ? 今の所唆した黒幕がいたって情報は聞いてないぜ。本人に聞こうにも、斬っちまったから聞きようがねぇし」

 現在揉めているファミリーが、過去揉めて遺恨を持つ人間を唆して狙わせる。珍しくとも何とも無い話だ。ここ最近はそこまで険悪に揉めているファミリーはいないが、機会があったら少しでもボンゴレの力を削いでおこうと考える者も少なくないはずだ。
 綱吉が最初に次期10代目に指名されてから早10年。それだけの時間をかけて内外に10代目だと認めさせたが、未だにボンゴレ内にも綱吉を良く思わない人間はいる。ヴァリアーのように大っぴらに反抗している者や、獅子身中の虫の如く隠れて反抗の機を窺っている者などが、確かに存在している。

「実はうちが黒幕だったりしてな。オレのボスは今でもお前らを10代目なんぞと認めてねぇぜ」
「ガキを唆して殺させるなんざ、お前のボスはそんなプライドの低い奴じゃないだろ」
「はっ、言うじゃねぇか」

 赤くなった顔にげらげらと些か品の無い笑い声。既に2人で空けた瓶は3本、間違いなく酔っている。
 それでも。たとえ酔っていてたとしても、その眼光は鋭い鮫に違いない。
 ギィン、と空間が凍ったようだった。
 予告なしに膨れ上がる殺気。
 否応なしに襲い来るプレッシャー、しかし山本は微動だにしなかった。

「いつまでも甘ちゃんの言う通りハイハイ従ってるだけじゃ、お前ら死ぬぜ」

 スクアーロの剣は今彼の手の届く位置に置いていない。だが義手に仕込んだ剣がある。
 山本の剣はソファに立てかけてある。義手という鞘を抜く間に剣を取る自信が山本にはある。
 いつでも殺し合いを始められる状況でありながら、山本は、笑った。
 無邪気に、凄惨に、口の端を上げた。

「いいんだよ、ツナはあれで。ツナの敵はオレが斬るから」


 決意も覚悟もとっくにすませた。
 綱吉を狙うなら、誰であろうとも、躊躇なく刀を振り下ろす、と。
 それがたとえ、今日のような、年端の行かない子供であったとしても。


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 山本とスクアーロは時々飲んでるらしい。
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