小話帳

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 基本的に書きなぐったブツの収納場所。オチのない話も有り。
 Fate(原作が18禁)とエロっちぃ話はネタバレ機能で隠してます。

  衛宮家の食卓(大勢)
2007/12/01 ◆ Fate(型月)
「たまにはこういうのもいいでしょ?」


 そう言って彼を誘った時、誓って凛に他意はなかった。
 もっとも、最初から最後まで面白がっていたのも、また否定できない事実なのだが。



          衛宮家の食卓




 総勢7名が居並ぶ衛宮邸の居間で2人の男が睨み合っていた。

 1人はこの屋敷の主である衛宮士郎。青年と呼ぶには未だその容貌に少年の匂いを残している。今は絶対に負けてたまるかと歯を食いしばり、目前の天敵を威嚇している。
 対するはアーチャーのクラスに位置する、遠坂凛のサーヴァント。鍛え上げられた全身と精悍な顔立ちが印象的な、漢前という表現に相応しい青年だ。士郎のガン付けなど何処吹く風とばかりに受け流し、明らかにその目は士郎をせせら笑っている。

 奇妙な緊迫感を醸し出している2人の間には、2段に積まれたみかん箱が鎮座していた。
 みかん箱である。
 中にみかんがぎっしり詰まった、箱の外観にみかんのイラストが描かれている、誰がどう見ても間違うことなきみかん箱である。

 そのみかん箱を挟んで何故こういう状況になっているのかと言うと、発端は藤村大河に他ならない。
 彼女は時折果物やらガラクタやらを箱単位で衛宮邸に持ち込んでくる。その度に士郎に文句を付けられるが、藤ねえは士郎の説教などあっさり聞き流す、ここまでがデフォルトだ。
 今夜も藤ねえが2箱も持って来たみかんに対し、士郎が「こんな量消費できるか」と文句を付けて――ここまでは変わらなかったのだが。
 今夜の衛宮家にはイレギュラーがおり、その彼が口を挟んできたのである。


「彼女にしてみれば腐らすのは忍びない、この家ならば全て食べきれるだろうと踏んだからこそ差し入れているのだ。普段からエンゲル係数が高いと頭を悩ませているのだから、感謝こそすれ憤る謂れはないと思うが?」
「だからって限度っつーもんがあるだろうが! 一気にみかん2箱も持って来られても食べきれるか!」
「それを何とかするのが厨房担当の貴様の役割だろう。蜜柑ならば加工の仕方によってはかなり日持ち出来る。創意工夫もせずに無理の一言で片付けるのは怠慢に過ぎよう」
「…っ」


 士郎の言い分を完全無視、藤ねえを完全擁護という偏った発言だが、確かに正論でもある。士郎は上手い反論も思いつけずに「くっそぉ…!」と内心で悪態を付くしか出来ず、横から藤ねえが「いいぞーアーチャーさーん、もっと言えー!」などと味方に声援を送っていた。

 一方で、他の女性陣は淡々としたものだ。
 ライダーは我関せずとニュース番組を見るばかりで、セイバーは2人の動向を気にかけつつも意識の大半はみかんの消費に向かっている。アーチャーを今夜の食卓に招き入れた当の本人である凛は完全に見物客状態。ただ1人間桐桜のみが、2人をどうにかしないととオロオロしていた。


「あ、あの、姉さん。そろそろ止めないと…」
「え? どうして?」
「どうしてって姉さん、だって先輩が…!」


 アーチャーに対してただ1人命令できる立場の凛に助けを求めたのは真っ当な判断だが、生憎と助けを求めた先の人格に問題があった。


「いいんじゃない、放っておいて。別に害はないんだし、楽しいし」
「姉さん! 楽しんでいる場合じゃありません!」
「いいのよ、あれはあれで。
 どうもねー、最近アーチャーってばアレでストレス発散してるみたいなのよね」
「…ストレス発散? 姉さん、アーチャーさんがストレスを溜めるようなことをさせてるんですか…?」
「失礼ね、違うわよ」


 と凛は口を尖らせるが、桜の疑いの眼差しは消えない。日頃の行いが行いなので仕方のない話だ。


「そうじゃなくて。今のところ士郎を殺すのは諦めたみたいだから、その分をアレで発散させてるってこと」
「え…、それじゃあ…」
「アレを止めさせて、代わりに士郎を狙わせるよりマシでしょ? 冗談抜きでアイツが本気になったら、セイバーとでも五分に戦えるんだから」
「…それは…そうですけど…」


 まして、彼は弓兵のクラスだ。いかに最強のクラス、最大の魔力を誇るセイバーでも、剣の届かぬ超長距離から狙われでもしたら、その勝率は五分どころではなくなる。


「ま、ね。また本気で殺そうとするなら、また止めるだけだけどね。
 そういうことだから、桜。アレはじゃれあってるだけなんだって納得しなさい。割り切って眺めてたらかなり楽しめるわよ?」
「姉さんっ!」


 本当に割り切れるような性格なら、最初からどうにかしないとなんて思わないでしょうけどね。

 それ以上を言葉にするのはやめて、凛は視線を睨み合う2人に戻した。
 元は同じ2人、似たもの同士の2人、だけど全然違う2人。
 凛にとってこの2人が喧々と言い合う様は微笑ましくあり、また何にも変えがたいくらいに面白くもある。

 こんないいモノが見られるのなら、これからも時々はアーチャーを連れて来ることにしよう――
 そんな士郎にとっては迷惑この上ない決心を固めつつ、凛は山と積まれたみかんに手を伸ばしたのだった。

  アスランとカガリ(パロディ)
2007/04/21 ◆ 種・デス種
 その日、運命に出会う――――



――問おう。お前が、私のマスターか」


 たった一差しの月光がその姿を浮き彫りにした。
 他に光源のない暗闇の中、絹糸のように柔らかな金糸だけが輝く。髪と同じ色の瞳は何人にも侵されない意思の力がある。強く強く見据える先は声と同じ先、すなわち――俺のもとに。


「召喚に従い、参上した。マスター、指示を」


 白と青を基調とした甲冑は動きを制限させない為の必要最小限のもの、しかし確実に急所は守らんとする実用性に長けたものだった。だがその甲冑の美しさは機能美という言葉をはるかに超えている。ただ彼女の為だけに創られた甲冑は、彼女を最も美しく飾るドレスのようですらあった。

 少女に何も答えられなかったのは、理解の範疇を超えた現状が把握できずに呆然としていたからではなかった。
 見惚れていたのだ。宝石の様な目で見下ろしてくる、この少女に。


――これより私の剣はお前と共にあり、お前の運命は私と共にある。
 ――ここに、契約は完了した」


 凛、という形容詞は正しくこの少女の為に創られたかのようだ。見た目はまだ彼とそんなに変わらない――いや、もしかしたら俺よりも年少かもしれない容貌でありながら、その内に潜む力は老獪と言っても過言じゃない。
 いっそ人形かと疑ってしまいたくなるような、人間離れした綺麗な少女。
 その少女が、俺と共にある、と――


「契約って…何の――――


 俺も魔術師の端くれだ。契約、という言葉の意味を知らぬはずがない。だが俺はこの少女と交わす契約というものに全く心当たりがなく、鸚鵡返しに聞き返すことしか出来ない。
 だが少女は俺の問いになど答えず、現れた時と同じ光の速さで、土蔵から駆け出して行った。

 その先には、未だ槍を構えた男。
 俺は体の痛みなど瞬時に忘れ、慌てて少女を追った。あんな女の子があの槍兵に敵う訳がないと思うまでもなく、ただ少女が俺から離れていくのが怖かったかのように。



 たとえ記憶が失われても、体が全て失われても、決してこの瞬間のことだけは忘れることは出来ないだろう。
 これは魅了されたなどという次元の話じゃない。最早囚われたとすら言ってしまえるほどの、あまりに強烈過ぎる衝撃。


 その日、確かに俺は運命と出会ったのだ。


  ===============

 もういい、何も言うな…!
 「またパラレルか」とか「よりによってFateかよ」とか言わなくていい、言わなくていいんだ…! 分かってるんだ、分かってるから…!

 …いやしかし、何と申しますかね。うん。
 パラレルならパラレルでもいいから、せめて名前くらい出せっつーんだよ、俺。またアスランもカガリも名前の一文字も出てきてませんよ。どうなんですかこの極悪な所業。


 セイバー=カガリ、士郎=アスランで書いておいて何ですが、
 カガリはむしろセイバーよりも凛さまタイプな気がします。アスランも苦労人属性がアーチャーそっくりっつーか。
 そう思うならそっちで書けっつーんだ。
グッチ カバン(2014/03/27 05:22)
ロバート(これは彼が実際に制御することができます正確にどのようにして。もう一度小うるさいことを忘れないでください、誰もが想像しています)と同様にカーラ靴 - 彼の貧しい人々の健康に会ったペアに見えるかもしれません 彼女は実際にマスターを柔道と同時にホルスターATから男の拳銃の恩恵よりもレスすることができます。しかし、覚えているが、一度、彼女はあなたの元ボーイフレンドが見落とさないために評判をレンダリングするものを死FAKIRになることを、ロバートはなります もし自分でマーリンと関係がある動物、そして彼女の非常に自身の新鮮なガールフレンドモルガナルフェイの中陰謀からunhazardous皆をしておこう、モンスター、正確な牧師ドミニクDarrk。
gucci iphone5s(2014/04/25 17:43)
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キラキラiphone4sケース(2014/04/25 17:43)
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  アスランとカガリ その8
2007/02/08 ◆ 種・デス種
 獣が向かっている間にも人間達は近づいて来る。既に人間達は獣の縄張りに侵入していた。さほど広くもない縄張りだ、獣と遭遇するのはもうすぐだろう。
 獣は怪訝を抱く。森に侵入してきた人間は複数だ。2人や3人ではない。大勢の臭いが重なり合って人数の特定も出来ない。
 麓の村の者ならこんな奥まで来ないし、精々が連れ立って3、4人程度。故に麓の人間ではあり得ない。
 それでは、この人間達の目的は何なのだ?

 そして時を置かず、獣は人間達と遭遇した。人数は10、11人程。皆が皆武装した兵士だった。油断なく周囲を警戒し、獣に気付いてからは、全員がその刃を獣に向けた。それでも逸ってきりかかって来ないのはよく訓練された証だ。

「…何用だ、人間」
「お前がこの森のバケモノかっ!?」

 問いに問いで答えたのは、紫色の髪の男だった。
 恐らくこの男が一行の主なのだろう、他の兵士よりも格段にきらびやかな鎧を身に纏っている。お世辞にも似合っているとは言えない様子が生粋の武人ではないと雄弁に物語っていた。構えた剣は実用よりも儀礼用の代物だろう、派手な装飾のせいで刀身の重心が狂っている。
 本人としては勇ましく獣に対抗しているつもりなのだろうが、それも兵士達の数に任せた虚勢だとすぐに知れた。

「去れ。ここは人間の来て良い居場所じゃない」
「そうはいかない! ボクは優しいからね、恩赦をくれてやる。
 おとなしくカガリを返せ! そうすれば殺さずにおいてやる!」
「…なに?」

 獣は思わず問い返した。
 カガリ、それはあの娘の名前だ。獣を慕う、あの金色の娘だ。

「聞こえなかったのか? カガリと返せと言ったんだ、このバケモノめ!」

 ちゃり、と剣を構え直す音。獣はようやく理解した。この男は娘の縁者か何かで、獣にかどわかされた娘を取り返しに来たのだ。
 娘の父から話を聞いて自発的に来たのか、娘の父に頼まれたかは知らない。そして獣にはどちらでも関係がない。獣にとって間違いないのは、この男が獣の敵だということ、そして――ついに終わりが来た、それだけのことだ。

 男達は獣に気取られて気付いていなかったが、獣の鋭敏な感覚はとうに気が付いていた。
 あの娘が獣を追って来ていることを。
 一度は獣の帰りを待つと言いながらも、心配で心配で、つい追いかけてきてしまったことに。

 そして、皆が一堂に会する。

「…ユウ…ナ…?」
「カガリィッ! 無事だったんだね!?」

 見知った顔と武装した一団を見て、カガリは一瞬で全てを察した。
 怪我一つない様子のカガリに、紫色の髪の男――ユウナは大手を広げて悦んだ。
 そして獣は――



   ==============

 いい加減に終わらせろと自分に言い聞かせつつもまだ続きます。ぎゃふん。

 さて、その7で「皆さんお待ちかねでも何でもない」と予告した「あの人」とは…、某M女史の予想通り、ユウナでしたー。正解おめでとうございます、ドンドンぱふぱふー♪
 カガリに横恋慕して乗り込んでくるような奴はユウナしかいねぇよなーと、その5を書いてる辺りから登場が決まってました。ユウナの癖にキラを差し置いて登場するとは生意気な(笑)

  あいしてる?(凛とアーチャー)
2006/12/01 ◆ Fate(型月)
「君はサーヴァントを何と考えているのかね?」
「当然。私の僕だと考えているわよ」




あいしてる?

―――― アーチャーと凛の場合




「僕とは随分と傲慢な言い分だな。聖杯戦争におけるサーヴァントは魔術師が作り上げた下位の使い魔とは違うのだぞ」
「分かってるわよ。人間に従うどころか、遥かに人間よりも上位の存在だってことくらい誰だって知ってるわ」
「そうだ。主人に従属する使い魔とは違い、聖杯戦争を勝ち抜く為の剣となり盾となる存在だ。――ならば、そのサーヴァントに家事仕事をさせるのがどれ程愚かなことなのか、君が理解出来ないはずはあるまい?」


 カラン、とバランスを崩した陶器が流しの中で音を立てた。
 場所は遠坂家居間、時は昼食直後。急な調べ物に没頭中の凛がアーチャーに「片付けておいてくれる?」と声を掛けたのが発端だった。


「愚かね。その通りと言わざるを得ないけれど。
 今は結界の中にいるのだから、差し当たっての仕事がないアーチャーと、差し当たっての調べ物が山積みの私、どちらがより時間を無駄に出来ないのかしらね? 戦闘が本分と言っても、細かい所でマスターを補佐するのもサーヴァントの仕事じゃないかしら?」
「補佐に関しては異論は無いが、その内容には承諾しかねる。そもそも茶坊主など欲していないと言ったのは君だろう?」
「そうだけど――
 …ああもう、いいわ。私が片付ければいいんでしょ」


 いかにも重い腰を上がると言った風に、凛は一度は背を向けたキッチンに戻った。やれやれ、とアーチャーはこれ見よがしな溜息を洩らす。


「最初からそうしていれば無駄な口論に時間を割くこともなかったろうに」
「ええそうね、まったくだわ。今度からは問答無用で『命令』することにするわ」
「――凛」


 それでは根本的な解決になっていない、それどころか完全に力技である。凛への絶対服従を強いる令呪を発動させるわよ、と暗に脅しているのだから。
 1人分の食器など洗うのに5分とかからない。程なくしてキッチンから出た凛は足早に自室へ向かった。…尚も小言を寄越そうとするアーチャーを無視して。


「ああ、そうだ。アーチャー」
「何だ」


 完全に閉め出す形で自室の扉を閉じようとする直前。凛はぴょこん、と顔だけを廊下にのぞかせた。


「3時になったら紅茶を入れてね。お茶請けはクッキーが上の戸棚にあるから忘れないで」
「…凛。つい先ほど言い合っていたことをもう忘れたのか?」
「あのね。人を健忘症扱いしないでくれる?」


 凛とてアーチャーの言い分は理解している。敵はいつ襲ってくるか分からない、自宅の結界の中でも絶対に安全とは言えない。故にサーヴァントは余計なことをする暇があるなら周囲の警戒に目を向けるか、魔力の回復に専念するかのどちらかをするべきなのだ、と。
 分かった上で片付けをと言ったのは朝からの調べ物に多少なりともいらついていたからで、そして紅茶は、


「いいでしょ、それくらい。アーチャーの入れた紅茶、好きなんだから」
「…」
「…何よ、その顔」


 アーチャーの動きが止まった。硬直は一瞬にも満たなかったが、生憎と凛はしっかりと気付いている。


「いや…。分かった、では3時だな」
「? ええ」


 急に従順な態度になったことを訝しがりながらも、凛は追求よりも調べ物を選んだ。パタン、と軽い音を立てた扉は凛の部屋と廊下の空間を閉ざす。
 だから、凛は見られなかった。


「…まいった」


 思いがけない素直な賛辞に全面降伏するしかなかった、アーチャーの間の抜けた姿を。

  アリスとオーランド(パンプキン・シザーズ)
2006/11/29 ◆ その他・漫画
 小さい体に大きい心。
 大きい体に小さい心。

 どちらも不完全な存在で、どちらも足りないものばかり。
 だけどふたりが一緒なら。
 きっと出来ることは増えるはず。



「お前も学習しないねぇ…」
「は、はぁ…」

 いつもの病院、いつもの病室。
 とある任務で暴徒と化した民衆に襲われ、アリスを庇ってオーランドが怪我をし、入院先で散々説教。
 とっくにアリスは怒りを撒き散らしながら退散しており、残されたのは項垂れたオーランドと置いてけぼりにされたオレルドとマーチスだ。
 これもまた、いつものことだった。

「少尉を守りたいってーのは分かるけどな、もうちょっと手段を選べよ、手段を。少尉が怒るのも当たり前だぞ」
「はぁ…でも考えてたら間に合いませんでしたし…」
「そうじゃなくて。少尉を助けて伍長が犠牲になるような助け方じゃなくて、少尉を助けて伍長も無事になるように努力しろってこと。今はまだ入院程度ですんでるけど、下手すれば一生歩けなくなるとかもあるんだから」

 オーランドの助け方は、とにかく自分の体に頓着しない。アリスが無事なら自分はどうなっても問題ない、そういう助け方をする。

 今回の入院だってそうだった。
 鍬で襲ってきた暴徒、その先にいたアリス。
 手を引くだけで良かった。オーランドの力なら一息にアリスを安全な距離まで退避させられた。そして最悪の瞬間さえ逃れれば、あとはアリスは自分で対処できる。
 だが、オーランドはアリスの手を引いただけでなく、自分の体をアリスと暴徒の間に滑り込ませた。
 …結果、背中に大きな裂傷を得た。
 凶器は手入れされた刃物ではなく、野良仕事の汚れが付いたままの鍬。荒い傷口は治り難く、汚れは炎症を引き起こした。
 そして場所は背中。もし脊髄を傷付けていたら下半身不随もおかしくない。

 マーチスの忠告はもっともなもので、アリスの怒りも当然だ。アリスは守られるを良しとする性格ではないのだから。
 とっくにアリスの性格もわかっているだろうに、それでもオーランドは同じ事を繰り返す。

「でも…」
「でも、何だよ。何か理由でもあんのか?」

 あるなら言ってみやがれ、と先を促したのを、オレルドは盛大に後悔する事になる。

「少尉は…きれいだから…。ちょっとでも傷が残ったら大変じゃないですか」
「…」
「…」

 沈黙が病室を支配した。それを作り出したオーランドは全くの無自覚。呑気に急に黙った二人を不思議がった。
 かなりの時間を回復に要した後、オレルドとマーチスは同時に大きく大きく息を吐いたのだった。

「お前なぁ…。そーゆーことは少尉本人に言え」
「は? …あ!? ちちちち、違います! いえそのそういう意味じゃなくて! 少尉はおれみたいに全身傷だらけじゃないから、その…!」
「そーゆー意味でもこーゆー意味でも一緒だっての。行くぞマーチス。つまんねぇもの聞いちまった」
「…そうだね。じゃあお大事に、伍長。僕もそういうことは少尉に直接言った方がいいと思うよ」
「いえその、だから違うんです…!」


 ちなみにオーランドは退院後オレルドに「ほらほら言えって、あんなセリフは少尉に直接言わなきゃ意味ねえだろ?」と盛大にからかわれることになる。
 マーチスはオレルドに盛大に呆れつつも今回ばかりは助け舟を出してくれず、アリスからは「何を遊んでいる!」と怒られるという、散々な結果が待っているのだった。



    =============

 ハマったら即執筆とゆー自分が笑えて仕方ないです。
 冒頭の詩っぽいものと小話が全く一致しません。推敲無しの一発書きな小話帳には多いことで、これもまた笑えます。

 伍長と少尉はいいですねーウフフー。
 5巻現在では伍長→アリスはまだ恋愛っつーより「おかあさん」の域を出てない感じでした。上記「きれいだから」発言は恋愛の好きがなくても普通にそう思ってるだろ、伍長。あいつは間違いなく天然だ。
 アリス→伍長は発展途上ってとこですかね。少なくとも異性として意識はしてる、けどまだ未自覚、みたいな感じ。ドレス姿を見られて恥らうアリスはもの凄く可愛かったです。