小話帳

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 基本的に書きなぐったブツの収納場所。オチのない話も有り。
 Fate(原作が18禁)とエロっちぃ話はネタバレ機能で隠してます。

  一騎と総士
2006/03/11 ◆ 蒼穹のファフナー
 えー…その、…すみません。
 「十二国記」のパロディです…。「ファフナー」と「十二国記」の両方を知っていないと意味不明…。
 そして私の乏しい記憶に頼って書いてるので、詳細は非常に怪しいです。

 それでもよろしければどうぞ。

 一騎は走った。我武者羅に走った。
 一騎は今自分を突き動かす衝動の理由を知らない。何故こんなに必死になっているのか、自分でも分かっていない。だが一騎は走らずにいられなかった。
 夜の黄海は危険だ、それは一騎にも重々分かっている。だがそんなことは何の抑止力にもならなかった。
 汕子と傲濫の静止も振り切った。一騎は汕子と傲濫を振り切って初めて、自分が転変したのだと気付いた。
 どうやって麒麟の姿に転変したのか、そしてどうしたら人の姿に転変できるのか。ずっと悩み続けていたそれらの方法を一騎は瞬時に理解した。理屈ではない、これは一騎の――麒麟の本能だ。本能とは考えて身に付くものではない。自分の内にあるものを気付けるか否か、それだけだ。今まで一騎は気付けなかった、そして今は気付くことが出来た。それだけなのだ。
 そして、気付けたからこそ一騎は走ることが出来る。この世界に存在する何よりも早いその脚で、ただ己が目指す人の所へと。

 混じり気のない漆黒の毛並みは艶々としており、僅かな月光を反射して夜の闇の中でも輝いて見えた。闇夜の黒ではなく黒真珠の黒だ。
 「彼」の一行の者が一騎を見つけた。妖魔を警戒して言葉少なになっていた一行が瞬時に騒然となる。皆が皆、一騎を見上げた。頂の上から一行を見下ろす黒麒の姿を。
 手の平の先すら見失ってしまいそうな闇の中で、一騎はただ一点だけを見つめた。一騎が目指して来た人物、一騎が会いたいと願った人物、そして、一騎がこれから罪を犯す人物。
 一騎がその前までやってくると、「彼」――総士の驚愕と歓喜が混じった表情がよく見えた。
 一騎はこれから総士を騙し、世界を裏切るのだ。

「転変出来たのですね、泰麒。素晴らしい」

 一騎が転変を解くと同時に総士から袍が被せられた。その袍は未だ少年の域を出ない一騎には大きい。跪くと更に大きく見えて――まるで袍の塊が総士に跪いているようにも見えた。
 一騎が総士の爪先に額を付けると、それまで騒然としてた周囲が水を打ったような静寂に包まれた。

「御前を離れず…」

 これは罪だ。王でない人に跪き、王でない人を王と偽るなど。

「勅命に背かず…」

 この人に抱いた恐怖は未だに消えない。確かに優しい人なのに一騎には理解できない怖さがある。親しみ易く一緒にいて安心できるというのならこの人よりも李斎の方がよっぽど。

「忠誠を誓うと」

 なのに、会いたいと思う。総士の傍にいたいと思う。
 その思いが何なのか、一騎には分からない。ただ耐えられない。もう総士に二度と会えないなど。
 だから一騎は罪を犯す。

「…誓約申し上げる」

 誰もが息を呑んだ。実質は数秒だったその沈黙も一騎には何時間にも感じられた。
 やがて一騎を抱き上げた腕の優しさに、一騎は――震えた。

「…よく言ってくれた…!」

 総士は感極まりない表情で一騎を見上げた。一騎は喜びの表情を作ることも真実を告げることも出来ず、俯いて顔を逸らす。その不自然さに総士も誰も気付かない。皆新たな王の誕生を祝っている。

「…総士、」

 一騎を抱き上げる腕はただ優しくて、一騎を見上げる瞳はただ穏やかで。
 総士から離れたくないばかりに総士を殺すことになる恐怖に、一騎は、泣いた。



   ============

 はい、一騎=陽子、総士=景麒のパロディだと思った人は手ぇ上げて!(笑)

 一騎=泰麒、総士=驍宗様のパロディでした。
 何となく…そう、何となく。このシーンが一総で書けそうだなーと思ったので書いてみました(笑)

 これは続きません…てか、続けません(笑)
 だってどうやって続けろって言うの。他のキャラクターもバカスカ出さないと無理でしょ。誰が誰を演じるの?(笑)
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  ディアッカとミリアリア
2006/02/14 ◆ 種・デス種
 パラレルです。
 >これの続き。




「あ」
「お、ミリィ。おはよ」

 嫌な顔にあった、とミリアリアは顔を顰めた。露骨に嫌そうな顔をしていると言うのにディアッカに堪えた様子はなく、むしろニコニコと破顔して歩み寄ってくる。

「おはようございますディアッカさん。それじゃあさようなら」
「待て待て待て待てって! 何もそんなに露骨に逃げなくてもいいだろ!?」

 速攻で踵を返そうとしたミリアリアをディアッカは必死で追いかける。かなりの速度で離脱しようとするミリアリアだが、生憎と足の長さと歩速でディアッカから逃げ切れる訳はない。

 忘れたいのに忘れようも無い入学式の出会い以来、ディアッカは顔を合わす度に迫ってくる。逃げたら逃げただけ追いかけてくる。
 何でいつも追いかけてくるのよ、とミリアリアは聞いたことがあった。
 その時の返答を、未だにミリアリアは信じようとしていない。

 そんなミリアリアの心中など露知らず、常にない上機嫌で、ディアッカは顔を寄せてきた。

「なーなーミリィ。何か俺に渡す物ない?」
「ないです」
「一刀両断かよ…。バレンタインなんだぜ、バレンタイン。チョコくれねぇの?」
「あげない」
「ひでぇ」

 あーあ、と嘆いて見せるが、下手な演技が見え見えだ。本気で哀しんでいるのではなく、こんなやり取りすら楽しんでいるのは明白だ。
 ミリアリアにはそれが腹立たしい。

「キラにはあげてたじゃん。なのに俺にはねぇの?」
「…何で知ってるのよ」
「さっき会った」

 キラの馬鹿、もう来年からはあげないんだから、と心中で友人を罵る。

「キラは友達だから。あなたは違うでしょ」
「え、何。義理じゃなくて本命くれる訳? うわー超嬉しい。サンキューミリィ」
「そんな訳ないでしょ! 何勝手なこと言ってるのよ!」

 馬鹿じゃないの!?
 睨み付けても怒鳴りつけても、ディアッカに堪える様子は無い。
 それすらも楽しんでいると、何処まで冗談で何処から本気なのか分からない態度で接してくる。

「…貴方なんて嫌いよ」
「あー、またそれ?」
「大嫌い」

 ミリアリアは駆け出した。今度はディアッカは追いかけて来なかった。



 苛々する。
 アイツといると苛々する。
 馬鹿じゃないの。私はいつも嫌いって言ってるのに、いつもいつも付き纏って。
 いつもふざけた態度で馬鹿みたいに好きだなんて言われても信用なんか出来ない。

 ディアッカなんて大嫌いよ。
 何回好きって言われても、私は好きになんかならないわ。
 だって私は…私が好きなのは――



   ===================

 続けるなよ。

 …いや、続けるつもりなんてなかったし、続きのつもりで書き始めた訳でもないのですよ。ただ書きあがったら続きになっちゃってました、という不可思議現象。
 仕方ないと言えば仕方ないかもしれません。バレンタインネタを書こうと思えばどうしてもパラレルになるし。

 血のバレンタインネタも書きたい書きたいと思いつつ毎年書いてません。ぎゃふん。
 パトリックとレノアさんとか。レノアさんとアスランとか。ザラ一家は大好きなのになぁ…。
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  アスランとカガリ その6
2006/02/04 ◆ 種・デス種
 春が近付いていた。
 おそらく10日前の雪が今年最後なのだろう。元々雪が積もることなど10年に一度も無い土地だ。早朝に霜も立たなくなり、日差しが柔らかくなってきていた。

 気持ちいいなと、カガリは大きく伸びをした。
 寒椿などの冬の庭が眠り始めた代わりに春の庭が目覚め始めている。カガリは昨日クロッカスが咲いているのを見つけた。小さな山吹色が春の訪れを感じさせる。

「…あ、お早う。今日もよく晴れているぞ」
「…」

 獣が屋敷の方からカガリを見ていた。
 獣は軽く目を伏せるだけでカガリに答えることは少ない。最初は返事くらいしてくれたっていいじゃないかと思っていたカガリも、次第に慣れた。屋敷に置いてくれているだけでも幸せだもんなと、カガリは顔をほころばせる。

「出かけるのか?」
「…そうだ」
「うん、じゃあ気をつけて。雨…は、今日は大丈夫そうだな」
「…」

 獣は毎日森に出かける。それは散歩などではなく、獣が自分の縄張りを主張する為の見回りだ。
 カガリは出かける獣を庭先で見送り、帰宅するとお帰りと微笑う。それが毎日の習慣になっていた。


 獣が見回る範囲はそう広くない。もとより獣は食事を屋敷で取る。獲物を求める必要がない為に広い縄張りは必要ないのだ。獣が自分の縄張りを主張しているのは、以前獣を敵視していた虎のような外敵に対する牽制だ。

 …?

 獣は空気の違いを感じた。
 小さな、しかし確実な異分子の気配。獣の縄張りからそう遠くない場所に人間が踏み込んできている。
 おそらくは森の入り口付近だろう。獣の縄張り内の生き物達はそう警戒していないが、縄張りの外の者は警戒を強くしている。

 …ふもとの人間か?

 森の近くに住む人間は時折森に恵みを求めにやって来る。だがそれは秋の恵みであったり、冬に薪を求めてだったりするのが殆どで、春先のこの季節にやって来るのは異例と言える。
 小さな取っ掛かりを覚えたが、獣は一先ずは気にしないことにした。人の気配はまだ近付いてきていない。もし獣の縄張りに入るようなら、その時は排除すれば良いだけのことだ、と。


 日課を終え、獣が屋敷の門をくぐる。そうすると門がすぐ見える位置に待機していたカガリがお帰り、と駆け寄ってきた。

「丁度良かった! こっち、こっちに来てくれ!」
「…?」

 早く早く、とカガリが急かすのにつられ、獣はカガリの後を追った。
 カガリが向かったのは春の庭。先日見つけたクロッカスを始めとして、様々な花々が日々美しくなっている場所だ。

「ほら、これ。さっきやっと開いたんだ」

 八重大輪の梅の花。満月のような形状から月宮殿と名を冠する花の香りが、獣の鼻先をすくった。
 綺麗だよなぁ、と梅香に惹かれ、カガリは花に顔を近付けさせる。獣はカガリが花を愛でる様を黙って見詰めていた。

 乳白色の花弁とカガリの金の髪はとても良く合っていた。



 きれいだ、と思った。
 その瞬間だけは意地も何も取り払い、とてもきれいだ、と思った。


       =============

 はぁーいこんにちはー! 2ヵ月ぶりの小話更新でぇーす! このパラレル話は4ヵ月ぶりの更新でぇーす!

 もう大半のお客様に見捨てられているだろうこの小話連載、続ける気はあるのですよ、気は!
(気だけかよ)
 次回更新は…善処します。
(政治家みたいな言い方は止めなさい)
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  ディアッカとミリアリア
2005/12/05 ◆ 種・デス種
 パラレルです。








 その一瞬に捕らわれた。


 その日ディアッカ・エルスマンは盛大な遅刻をした。
 入学式の開始は9時。しかしディアッカが学校の最寄り駅に着いたのは9時半だった。駅から急いでも体育館に到着する頃には終了間近になっていることだろう。
 元より参加する意欲がなかったせいもあり、ディアッカはのんびりと歩いていくことにした。
 そもそもディアッカは本日の主賓――入学生ではない。生徒会の仕事に関わっているからと無理矢理出席を命じられたのだ。その生徒会とて成績優秀だからと教師に押し付けられ、クソ真面目な友人共に連行される形で仕事をしている。

 入学式なんてタルイもん、自分の時だって面倒だったっつーのに。

 校門から入ったら誰かに見咎められて面倒になるかもしれないと、ディアッカは通用門から入ることにした。校舎の裏側の用務員室に面する位置にある通用門は意外と生徒には知られていない。
 校舎裏から非常階段を上って生徒会室まで行くかとディアッカが足を進めると、その先にうずくまった人影を見つけた。
 セーラー服を着ているからにはこの学校の女生徒だろうと容易に想像がつく。だが、何故こんな校舎裏にいるのか。ここは通用門と裏庭しかなく大半の生徒がこの通路の存在すら知らずに卒業していくような場所だ。用務員室を警戒してか、授業をフケたカップルがイチャつきにも来ない。それが女1人で、しかも入学式の最中に。
 ディアッカはその女生徒に近付いていった。距離が短くなるにつれ、女生徒の輪郭がはっきりとしてくる。くせのある茶色の髪と、後姿だけでもわかる小柄な体躯。全く見覚えがないからには新入生だろうかと思い、声をかけようとした瞬間、少女が振り向いた。

 少女は泣いていた。両目からとどめなく涙を流し、嗚咽を堪える為か口を引き結んでいる。見開かれた双眸を彩っていたのは悲しみや辛さではなく、もっと激しく強情な――怒りに似た色。
 きれいな泣き顔ではなかった。泣くものかと我慢しているのに泣いてしまってそれが悔しい、そんな表情で、充血した目の赤さが不気味なほど鮮やかだ。癇癪を起こした子供が泣きじゃくったようなぐしゃぐしゃの顔。

 決して見栄えなどする筈もないその表情からディアッカは目が離せなかった。

 少女はディアッカを睨み上げている。ディアッカは射竦められて動けない。2人の間に不自然な沈黙が出来上がる。
 やがてそれを破ったのは少女の方だった。口元に手を添えてこみ上げてきた嗚咽を必死に抑えようとする。だが抑え切れなかった嗚咽が、喉をひっくと鳴らす。ディアッカにそれを聞かれたのが恥だと言うかのように少女は眼光を強くした。
 ディアッカはあー、と意味のない声を上げた。少女に何か言いたいのに、何を言えばいいのか分からない。やがてポケットに突っ込んだままだった手に触れた物に気付き、ようやくセリフに出来た言葉は。

「…えーと。ガム食う?」
「いらないわよっ!」

 ディアッカ自身間抜けとしか思えないセリフは、少女の頑迷な拒絶を受ける。



 その日ディアッカ・エルスマンはミリアリア・ハウという少女を知った。

       ==================

 最近種の小話はパラレルしか書いてないような…?
 …気のせいだ、うん。気のせい気のせい。

 で、何のパラレルかと言うと。
 高校生パラレル…と思いきや、正解は「NERVOUS VENUS 」です。まぁ高校生には違いありませんけどね(笑)
 好き合っていた相手と告白出来ないまま永遠の別れを強いられたハルと、そのハルを盲目的に愛するセキの話。ディアミリで書けそうだなーと前々から思っていたのです。
 つまりハルがミリアリア、アキ(ハルが好きだった人)がトール、セキがディアッカと。本当ならハルとセキは同級生ですけど、ディアッカは年上だから先輩ということに(笑)

 …これは続きませんよ(笑)
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  陽子と鈴
2005/12/04 ◆ 十二国記
 鈴は奇妙奇天烈な光景を目にした。
 景王の私室の扉にへばり付いてこっそり中の様子を伺っている人物が1人。
 それだけでも十分に奇妙なものだったが、もっとおかしなことには、そのへばり付いている人物がこの部屋の…いや、この慶国の主だということだ。

「…何してるの、陽子…?」
「…鈴? しっ、静かにしてくれ」
「はぁ…?」

 口に人差し指を添える、蓬莱独特の仕草で陽子は鈴の口を封じた。室内の人物に悟られたくないという意味なのだろうが、陽子の私室に陽子が身を潜ませなければいけない者がいるということ自体が異常事態だ。
 何してるの、ともう一度鈴が問いかけると、陽子は真剣そのものの神妙な表情で語り始めた。

「…中に祥瓊と玉葉がいるんだ…」
「? うん」

 女史である祥瓊と、鈴と同じく陽子の傍仕えを務める玉葉。その2人が陽子の私室にいて何の不思議があろうか。それがどうしたのと、鈴は一層首を傾げる。

「2人で良からぬ相談をしている…。今気付かれたら、拙い。非常に拙い…」
「ええ? あの2人がどうして陽子を困らせるような相談をするって言うのよ。中で何を話しているの?」
「…それが…2人で協力して、衣装やら簪やら首飾りやらを物色しているんだ…!」
「…はあ?」

 陽子が覗いていた隙間から鈴も覗き込んでみると、確かに祥瓊と玉葉の2人が色取り取りで見事な衣装たちを広げ、磨き上げられた珠玉の宝飾品と合わせて楽しそうに話し合っていた。
 つまり、どれとどれを組み合わせれば陽子に1番似合うかを。

「もっと簡素な格好でいいって言ってるのに、どうして皆私をあれこれと着飾りたがるんだ…!? あんな宝飾品をぞろぞろと付けても動き難いし気を使うしで、面倒なだけじゃないか…!」
「…」

 せっかくの美人さんなのに、どうして陽子はこんなに着飾りたがらないのかしら…。陽子もお年頃の女の子なんだからもっとお洒落したいって思って普通でしょうに。

 鈴は半ば呆れた様子で扉を開けた。
 慌てふためいた陽子は逃げることも叶わず。
 鈴からは陽子が壁になって見えなかったが、きっと祥瓊と玉葉の2人は、獲物を見つけた狩猟者の目をしていたことだろう。


    =================

 慶東国大好きです。
 陽子と景麒の主従関係が大好きで大好きで、そして陽子と祥瓊と鈴の友達も大好きで、「書簡」以降まだ登場していない玉葉さんも大好きです。

 玉葉と祥瓊は陽子を着飾らせたい同盟を組んでいるといいよ。
 鈴もそれに協力しているといいよ。
 そして最高に着飾った陽子のいい男っぷりに景麒は見惚れるといいよ(笑)
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