小話帳

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 基本的に書きなぐったブツの収納場所。オチのない話も有り。
 Fate(原作が18禁)とエロっちぃ話はネタバレ機能で隠してます。

  アーチャーと凛
2006/08/16 ◆ Fate(型月)
(Fateルートの後)



 似ている、って思った。
 だけど違う、とも思った。




 名前で呼んでみて、と言うと、士郎は馬鹿みたいに大口を開けた。

「…は?」
「は、じゃないの。いいから言ってみて」
「いや、でも。なんでさ?」
「実験よ、実験」
「…何の?」

 驚きの次は疑問。でも私は答えない。

「いいから言いなさい! 師匠の命令が聞けないって言うの!?」
「あー…その」

 じゃあ、って1回せきをして、のどを整える。意味は分からないけどこれ以上逆らうのは得策じゃないって言う態度がバレバレよ、ばか。後で覚えておきなさい。
 それじゃ言うぞ、なんて言っておきながら、実際に口にするまでかなり待たされた。

「…………凛」
「…ふぅん」

 ああ、やっぱり。

「………………で、何の実験なんだ、これ?」
「内緒よ。言っても仕方ないしね」
「あのなぁ…」

 士郎は呆れてため息なんか吐いてくるけど、私はそんなの無視してさっさと居間を出て行った。
 違う、って思った。



 単なる偶然なのか、何かの関係があるのかは分からない。
 今となってはそんなの確かめようも無い。

 似てる、って思った。
 声の高低。アクセントの位置。息の吐き方。その全てが。
 だけど違う、って思った。
 その中に潜む意思。私への感情、親密さ。揶揄に隠した真摯。



 私のアーチャーによく似ているけれど、決して同じものではない。
 もう二度と会うことなど出来ないのだと、とっくに分かりきったことを、私はもう一度自分に突きつけた。



     ==============

 えーと。
 何だか暗いです。後ろ向きです凛さま。

 弓凛っつーより凛→弓ですね。これだけじゃ恋愛なのかどうかは怪しいですが。

  花札3(凛とアーチャー)
2006/07/29 ◆ Fate(型月)
「勝負。カス10枚で1文だ。これで投了だな」
「…」
「凛、手札を見せてみろ。…何だ、鹿の札があるじゃないか。既に猪の札を出せているのに、何故猪鹿蝶を狙わない」
「…」
「揃えやすいたんやかすを狙うのも結構だが、それは堅実に手早く上がるための為の方法だぞ。今のように圧倒的不利な状況では点数の高い役を狙うのが得策…。…凛。聞いているのか?」
「…っるさぁぁぁぁい! 分かってるわよそんなこと! 人の負けを一々小姑みたいに細かく文句付けないでよね、馬鹿アーチャー!」
「誰が小姑だ。私は君の敗因を分析しているだけだろう。己の弱さを認めなければいつになっても強くなれないものだよ、凛?」
「うるさいわね、分かってるって言ったでしょ!? ほらトロトロしてないで、次やるわよ次! 今度こそこてんぱんに負かせてやるんだから!」
「…目的を履き違えていないか? 確かにこれは君の為の特訓だが、君が私を完敗させてどうする。試合が始まる前から仲間割れか?」
「そんなことどうでもいいのよ、絶対にアンタをギッタギタにやっつけてやるんだから! ほら! さっさと札を配る!」
「…やれやれ」



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 はーい、凛とアーチャーの特訓風景でしたー。凛さま負けず嫌い節炸裂、アチャさんいい迷惑(笑)
 花札だけで小話を3つも妄想させるとは…恐るべし、「Fate」。

  アスランとカガリ その7
2006/07/27 ◆ 種・デス種
 翌朝、獣は常よりも早く目を覚ました。空はまだ暗闇、夜明けにもまだ早い。

 …何だ?

 虫の知らせと言うものだろうか。ひどく落ち着かない。
 獣は夜明けまでを庭で過ごした。朝露に濡れた蕾は美しかったが、獣の不安を打ち消してはくれなかった。
 やがて空が群青から水色に変わる頃、獣はようやくその原因に気付いた。

 人間が近づいて来ている。

 おそらく先日の異分子と同じ者達だろう。森の入り口で様子を見ていたのを今日になって侵入を決めたと言うところか。人間の匂いはどんどん近くなってくる。獣の縄張りに侵入するのも時間の問題だ。
 獣は人間達の元へ行くことに決めた。案内する為などではなく、当然追い返す為に。

 この森は古くから「絶望の森」と呼ばれる地。人が立ち入って良い場所ではない。

 獣は無音で庭を進む。外の人間の気配に集中していた為、獣はカガリに気付かなかった。

「あ、いた。お早う!」
「…」

 軽快な足取りでカガリは近づいて来る。いつもの調子で獣に微笑みかけて、出かけるのか、と尋ねた。

「…そうだ」
「そっか。気を付けてな。もう雪は降らないみたいだけど、やっぱりまだ朝は寒いな」

 そう言ってカガリは肩を震わせる。
 獣は馬鹿かと1人ごちる。俺の心配などよりももっと自分を気にしたらどうなんだ。毛皮を持つ自分などよりも人間は遥かにか弱い存在だと言うのに。娘が寒さに震えても、獣には上着を掛けてやることすら出来ないのに。

「…今日は屋敷から出るな」
「え?」

 ふい、と獣は視線を逸らす。
 カガリは獣の様子がおかしいとすぐに気付いた。獣に言われなくてもカガリが屋敷から出ることは少ない。いまだ外に出るには辛い気候という事もあるが、それ以上に、この屋敷にこそカガリの想う者がいるのだから、出かける理由がない。
 獣もそれは知っているはずなのに、わざわざそんなことを告げたと言うことは。

「…何かあるのか? 危ないこと…?」
「…違う」
「じゃあ何でそんなこと言うんだ?」

 獣は門に向かった。己の失言を無かったことにするように、カガリから逃れるように。足早に、足早に。

「こらっ! 私には出るなっておいて自分は出て行くつもりか!? そんな馬鹿なこと…!」
「…今日は冷える、それだけだ」

 カシャン、と硬質な音を立てて門が開く。魔法がかかった門は獣が通り過ぎると同時に硬く閉ざされた。慌てて追いかけるカガリを置き去りにして。

「こら! 何をするんだ!? 出せー!!」
「おとなしくしていろ!」
「嫌だ! 私を置いて行こうなんて絶対に許さないからなっ!」
――すぐに戻る。だから待っていろ」
――え」

 カガリは動きを止めた。門をよじ登ろうとしていた足が地面に下りる。白い頬が、少し色味を帯びていた。

「…うん」

 門を掴んでいた手も下ろされる。カガリは何処か呆然と獣を見送った。獣は突然素直になったカガリに首をかしげながらも、やがて目的地へ徒歩を進めて行った。

 獣は気付かなかった。己がカガリに告げた言葉の意味に。
 すぐに戻る、と。待っていろ、と。それは獣が必ずカガリのもとに帰って来るという約束であり、獣がカガリを肯定した証なのだと。それは今まで一度も告げたことのない言葉だった。


 獣は自分でも気付かないまま、カガリの下こそが己の帰る場所だと定めていたのだ。


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 1回ごとに間が酷くなっていく小話帳連載、やっと7回目までこじつけました。
 約1年前に初めて、やっと今で7回目。あー、やっとここまで来たかぁ…。随分と長くやってるよなぁ、本当…。
(それは周期が長いだけで決して作品が長いわけではありません)(あうううう)


 次回は皆さんお待ちかねでも何でもない「あの人」が登場予定。
 つーか、いい加減に登場させないと話が進まない…(汗)

  イリヤとバーサーカー
2006/07/24 ◆ Fate(型月)
(UBWルート)

 彼は狂える者として召喚された。
 元より知性は失われ、理性は剥ぎ取られ、記憶は定かでない。
 思考も何もない、ただ主が敵と定めた者を討つだけの存在だ。
 本来彼の狂った頭は何も記憶しない。



 それでも、彼は覚えている。
 あの冬の森を覚えている。

 凍える大気の中。
 その小さな小さな体に大きな大きな苦痛と責務を抱え込まされ、
 彼以外に頼れる者はなく、
 彼以外に話しかける者もなく、
 躊躇いがちに彼に触れた、その手の小ささを。



 狂える者として召喚され、知性は失われ、理性は剥ぎ取られても。
 彼は英雄と定められし者。
 神々に認められ、人々に愛され、崇高な魂が英霊と化した者。
 その彼が。

 ただ己だけを頼りとする少女に。
 彼を死なせない為に自らの肉体の崩壊に絶え続けた少女に。
 孤独に慣れ過ぎた哀れな少女に。

 どうして応えないでいられよう?



 故に、彼はその身を保ち続けた。
 死して尚、その不撓不屈の肉体を。
 少女の信頼を最後まで裏切らぬ為に。
 死して尚、少女の誇りであり続ける為に。



 彼のただ1つの心残りは、
 少女を一度だけでも抱き上げてやりたかったこと。
 父親でも何でもない、ただのサーヴァントのこの身でも。
 絶対に守り通すと誓った少女を、
 ただ抱き上げてあげられなかったことだけ。



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 UBWルートの13日目、幕間・冬の森。

 泣くなんてもんじゃないよ、このシーン…。鼻水垂れてティッシュ使いまくりだよ…。
 この話を書く為に「冬の森」を何度も読み返したから、お陰で泣きながら書く羽目に…。
 うわぁぁぁあ、イリヤァァァ、バーサーカァァァァ…!(号泣)

  花札2(凛とアーチャー)
2006/07/18 ◆ Fate(型月)
「花札? 何それ」
「む。凛、君は花札を知らないのか?」
「知ってるわよ。遊んだことはないけど」
「…それを知らないというんだ」
「うるさいわね。それで? どうしてまた花札なのよ?」
「私に聞かれても困る。とにかくチーム戦で花札対決をすることに決まったらしい。無論、君は私と組むことになっている」
「ふぅん…。変なの。でも、ちゃんと試合になるの? イリヤやセイバーなんて絶対に知らないわよ、花札なんて」
「その為にこうして事前に知らされているんだ。君も花札は知らないと言ったな?」
「ええ、全然」
「ならば特訓だ。何、ルールはポーカーとさほど変わらん。さすがにポーカーは知っているな?」
「さすがにって何よ、さすがにって。知ってるわよ、それくらい」
「なら大丈夫だ。まずは各札を覚えることだ。役は実際に練習しながら徐々に覚えればよかろう」
「分かったわよ。…それにしても、アーチャー、貴方花札なんて知ってるのね…」
「私ももとは日本人だ。知っていてもおかしくはなかろう」
「そうだけどね…。やっぱり意外でしょ」
「無駄口を叩いている暇などないぞ、凛。それとも君は疎かな状態で試合ってあっさり負けたいのかね?」
「誰がそんなこと言ったのよ。戦うからには勝つ、当然でしょ。ほらっ、早く始めなさいよ!」
「了解した、マスター。それでこそ君だ」



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 花札小話その2。
 クリア後の混浴に殺されました。いっそアレを壁紙にしたいくらいです。そしてそんな私の今の壁紙は凛さまとアチャさんです(笑)
 花札対決を知らされた時にこういう会話があってくれたらな、と。妄想ですね(笑) 凛さまとアチャさんと会話はテンポが良くて気持ちよいです。

 そして何故凛を「凛さま」、アーチャーを「アチャさん」と呼ぶのかは謎のままです。不思議。