えー…その、…すみません。
「十二国記」のパロディです…。「ファフナー」と「十二国記」の両方を知っていないと意味不明…。
そして私の乏しい記憶に頼って書いてるので、詳細は非常に怪しいです。
それでもよろしければどうぞ。
一騎は走った。我武者羅に走った。
一騎は今自分を突き動かす衝動の理由を知らない。何故こんなに必死になっているのか、自分でも分かっていない。だが一騎は走らずにいられなかった。
夜の黄海は危険だ、それは一騎にも重々分かっている。だがそんなことは何の抑止力にもならなかった。
汕子と傲濫の静止も振り切った。一騎は汕子と傲濫を振り切って初めて、自分が転変したのだと気付いた。
どうやって麒麟の姿に転変したのか、そしてどうしたら人の姿に転変できるのか。ずっと悩み続けていたそれらの方法を一騎は瞬時に理解した。理屈ではない、これは一騎の――麒麟の本能だ。本能とは考えて身に付くものではない。自分の内にあるものを気付けるか否か、それだけだ。今まで一騎は気付けなかった、そして今は気付くことが出来た。それだけなのだ。
そして、気付けたからこそ一騎は走ることが出来る。この世界に存在する何よりも早いその脚で、ただ己が目指す人の所へと。
混じり気のない漆黒の毛並みは艶々としており、僅かな月光を反射して夜の闇の中でも輝いて見えた。闇夜の黒ではなく黒真珠の黒だ。
「彼」の一行の者が一騎を見つけた。妖魔を警戒して言葉少なになっていた一行が瞬時に騒然となる。皆が皆、一騎を見上げた。頂の上から一行を見下ろす黒麒の姿を。
手の平の先すら見失ってしまいそうな闇の中で、一騎はただ一点だけを見つめた。一騎が目指して来た人物、一騎が会いたいと願った人物、そして、一騎がこれから罪を犯す人物。
一騎がその前までやってくると、「彼」――総士の驚愕と歓喜が混じった表情がよく見えた。
一騎はこれから総士を騙し、世界を裏切るのだ。
「転変出来たのですね、泰麒。素晴らしい」
一騎が転変を解くと同時に総士から袍が被せられた。その袍は未だ少年の域を出ない一騎には大きい。跪くと更に大きく見えて――まるで袍の塊が総士に跪いているようにも見えた。
一騎が総士の爪先に額を付けると、それまで騒然としてた周囲が水を打ったような静寂に包まれた。
「御前を離れず…」
これは罪だ。王でない人に跪き、王でない人を王と偽るなど。
「勅命に背かず…」
この人に抱いた恐怖は未だに消えない。確かに優しい人なのに一騎には理解できない怖さがある。親しみ易く一緒にいて安心できるというのならこの人よりも李斎の方がよっぽど。
「忠誠を誓うと」
なのに、会いたいと思う。総士の傍にいたいと思う。
その思いが何なのか、一騎には分からない。ただ耐えられない。もう総士に二度と会えないなど。
だから一騎は罪を犯す。
「…誓約申し上げる」
誰もが息を呑んだ。実質は数秒だったその沈黙も一騎には何時間にも感じられた。
やがて一騎を抱き上げた腕の優しさに、一騎は――震えた。
「…よく言ってくれた…!」
総士は感極まりない表情で一騎を見上げた。一騎は喜びの表情を作ることも真実を告げることも出来ず、俯いて顔を逸らす。その不自然さに総士も誰も気付かない。皆新たな王の誕生を祝っている。
「…総士、」
一騎を抱き上げる腕はただ優しくて、一騎を見上げる瞳はただ穏やかで。
総士から離れたくないばかりに総士を殺すことになる恐怖に、一騎は、泣いた。
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はい、一騎=陽子、総士=景麒のパロディだと思った人は手ぇ上げて!(笑)
一騎=泰麒、総士=驍宗様のパロディでした。
何となく…そう、何となく。このシーンが一総で書けそうだなーと思ったので書いてみました(笑)
これは続きません…てか、続けません(笑)
だってどうやって続けろって言うの。他のキャラクターもバカスカ出さないと無理でしょ。誰が誰を演じるの?(笑)