ツナと獄寺の相互不理解シリーズ。
今回は別にエロっちくないけど、3と直接話が繋がってるんで隠します。
どうにかなるだろ、って軽く考えてたのはいつまでだったっけ。
行為そのものに慣れても行為の後のダルさは消えない。コップ一杯飲んだ程度じゃ喉も渇いたままだ。ああ、結構啼かされたもんな。
はぁ、って溜息を吐いたのは、体の疲れよりも精神的に疲れたからだった。
「…まいったな」
またいつもの展開だ。
好きだって言っても通じない、体を繋げても関係ない。
まったく、どうしてこんなに頑固なんだろうね?
オレが獄寺君に言ってる「好き」はボスから部下への親愛の情なんかであるはずがないだろ。
好きでもない相手と寝たいなんて思うわけないだろ。しかも、男同士で。
「十代目、風呂どうぞ」
「…ん」
促されたまま風呂に向かった。冷房が効いた部屋でもやっぱりあんなことをしてたら汗をかく。体にこびりついてるのは汗だけじゃないし。
シャワーのコックを回してやっと、オレは盛大に溜息を吐いた。下手に獄寺君の前で吐いたらまた何を見当違いな心配をされるか分かったもんじゃない。…って、あ、さっき吐いちゃったっけ。…ま、いっか。
「オレは恋愛感情で君が好きなんだけどねー…」
そうはっきり言ったこともあるのに、「またまたご冗談をー」で終わらせられた。
呟いた声は水音で掻き消される。わざとお湯にしないで火照った体を冷やした。どうせ水風呂に浸かっても風邪を引くような季節でもないし。
ぶっちゃけ言って今のオレと獄寺君の関係は、愛人関係だ。体の関係はあるけどその間に恋愛は芽生えてない以上そう言うしかない。
オレはさっさと恋愛も芽生えさせようと努力してる…んだけど、全然効果なしで。獄寺君は今の状態に違和感も何も持ってない。…いい加減に腹が立ってくるくらいに。
…て言うかさ、獄寺君。自分は愛人の子供ってことで色々とイヤな思いもしてきてるのに、自分が愛人になるのは構わないの? そりゃオレ達なら子供は出来ないけどさー…。
「まいった」
いい加減に獄寺君の頑固な思い込みには腹が立ってきてるのに、それでも好きだって思う気持ちは治まってくれやしない。
いっそ本当に子供でも出来てくれたら責任を取る名目が立ってくれるのに。
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何だろうこの怒涛の執筆スピード。
そろそろツナを幸せにしてあげたい。
ツナと獄寺の相互不理解シリーズ。
獄×ツナでちょっとエロっちさ有りなので隠し。
直前で引き抜けたのは奇跡に近かった。
「…ッ、は、」
びゅ、って妙に間の抜けた音を立てて腹の上に白濁が飛び散る。大きく深呼吸したらすぐに息は収まってくれたからさっさとティッシュでソレを拭った。腹の上にぶっ掛けられて気持ちのいい物じゃない。
「べつに」
背中越しに声を掛けられる。十代目の声は散々喘がせたせいで擦れてしまっていた。早く水を、と思って、オレは早々にズボンを引っ掛けた。
「中に出してくれても良かったのに」
「ご冗談を。後の処理が大変でしょう」
ゴムを切らしていたなんて何て失態だ。中出しなんてしたら十代目に負担をかける。十代目が気を休める為にお相手をさせて頂いてるのにオレだけが気持ち良くなってどうする。
背中を向けていたから見えなかったはずだけど、苦笑した気配だけは察してくれたらしい。十代目がくすりと喉を鳴らすのが聞こえた。肩越しに振り返ったけど十代目は反対側を向いて座っていた。
「どうぞ」
「うん、ありがと」
差し出した水は一気に飲み干された。…そんなに無理をさせたっけな、って不安になる。2杯目の要求は無かったからそうでもないのか。十代目が飲み干したグラスはサイドテーブルに置かれた。オレも自分用に汲んだコップを一気に飲み干した。
「あのさ、獄寺君」
「はい?」
「好きだよ」
「はい、ありがとうございます」
言葉で酬いてくれるのは嬉しい。が、やっぱり照れる。恋人でもない相手でも素直に好きって言えるのはこの人の美徳の1つなんだけどな。
この人の「特別」になりたかった。この人にとって掛け替えのない人間になりたかった。
最初は「唯一」になりたくて意地を張ってたこともあったけど到底そんなことはムリだってすぐに気付かされた。十代目はとにかく器が大きい。その大空のような大きな懐にはたくさんの人間を迎え入れてて、そいつらを全員排除するなんて絶対ムリだし、そんなことをしたら十代目が十代目でなくなる。オレも含めた全員それぞれが大切だから全員を守っている、それが十代目だ。
だからオレは、その全員の中でももっと「特別」を目指そうと思った。そしてそれはかなり実現できている、って言っていい。十代目が動く時に先には抜かりなく準備をしておけるよう、十代目のお考えを先に察することもできるようになった。若い頃の自称右腕じゃなくて、自他共に認める十代目の右腕になれた。
…なった、はずだった。
「…まいったな」
独り言のように呟いた十代目は、何でか困ったような顔をしていた。
十代目の右腕と呼ばれるようになり、十代目のことは十代目ご自身よりも分かるようになれた、はずだった。
なのに何で、ふいに時々、十代目をこんなにも遠く感じてしまうんだろう?
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奇跡的に続きました。勢いに乗ってる間にさっさと書いてしまえってのが丸分かりな執筆スピードですね。
ツナは獄寺が好きだから体の関係を持ってるんだけど、獄寺にとっては「お相手をさせていただいてる」ってだけで、自分と十代目との間に恋情が芽生えるなんてこれっぽっちも思ってない、ってのが、この相互不理解シリーズの基本コンセプトだったりするのです、よ。
…ツナがすげー不憫ですなぁ…。思い込み強すぎだよ、獄寺君。