小話帳

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 基本的に書きなぐったブツの収納場所。オチのない話も有り。
 Fate(原作が18禁)とエロっちぃ話はネタバレ機能で隠してます。

  銀月ふたつ(犬夜叉、殺生丸と母)
2009/02/18 ◆ その他・漫画
 静謐な森の中にその屋敷は建っていた。
 邸宅と言うには小さすぎ、家と言うには大きすぎる作り。この屋敷の主が所有する広大な城と多くの別宅の中でも1番小さい屋敷だ。形の上では相続してはいたものの、主が訪れることは一度もないだろうと思われていた。この屋敷は人里に比較的近い場所に建てられており、主は人間嫌いで知られていたからだ。
 その主が、今この屋敷に滞在していた。先代である父を亡くして以来ずっと放浪していた彼がやっと1つ処に留まってくれた、と家臣は歓迎した。その場所が本邸でないことは問題ではなかった。常に連絡が取れる場所に留まっていること、それだけが重要なのだ。
 そもそも彼はこの国の西方を統治する大妖怪の後継だが、その彼が実際に執り行う政務は、人間の国家と比べると驚くほど少ない。そもそも妖怪たちは人間のように年貢やら夫役やらを収める必要がなく、政府と呼ばれる程の官庁も存在しない。妖怪を統べる者の政務とは主に多種族間の揉め事の仲裁であり、それも家臣たちが代理として出向いて解決するのが殆どだ。彼に課せられた仕事はそれらの懸案の決裁や事後処理の承認であり、彼自身が出向いて仲裁せねばならない大事などは100年に1度も起これば多い方だ。
 故に、彼はこの屋敷で静かに暮らしていた。侍女や下働きも必要最低限しか置かず、定期的に決裁の必要のある書類を置いてゆく飛脚以外には訪れる者も殆どいない。他者に余計なことを煩わされるのを嫌う彼にとって理想的な環境と言えた。

 書斎に使っている部屋から何の気なしに外を眺めていた彼だが、不意に表情を険しくした。
 侵入者を感知したのだ。
 この屋敷は人里に近いが人は決して近づかない。主が認めた者以外は近寄れぬように施した呪がある以上に、本能的に「近付いてはいけない何かがいる」と感じ取って恐れているからだ。近辺に住む妖怪も同様であり、故に屋敷にやって来るのは飛脚と、それから主の知己以外はありえないはずだった。
 彼は近付いて来ている者の匂いに覚えがあった。だがその者がやって来る理由が全く知れない。戦う必要はないだろうと思いつつも、半ば本能的に彼は刀を取った。
 やがて侵入者が主の前に現れた時、彼はいつでも刀を抜ける体勢まで取っていた。

「何用だ」
「わざわざ尋ねて来た母に対する第一声がそれか、殺生丸? 全く、可愛げのない息子だ」

 母と名乗った通り、侵入者は主――殺生丸の実母であった。男性と女性の違いを差し引けば瓜二つと言っても差し支えのない容貌である。とても一児の母とは思えぬ若さと秀麗さの為、姉と弟と言われても容易く納得してしまうだろう。
 やれやれ、などと呆れたように声を上げているがその実は何とも思っていないのは明白だった。そもそも実の母子としては淡白に過ぎる関係である。母は普段自分の宮で暮らし息子のことなど1日に1秒も思い出さないことも珍しくなく、殺生丸は母に会う度にまだ生きていたのかと本気で思っている。
 知己ではあるが、殺生丸はこの母が侵入することを許してはいなかった。呪を突破したことを咎めたくはあるが、十中八九咎めたとて意味はないだろう。何しろ実の母のこと、妖力の質が似ている上に殺生丸の呪の癖も知られている。何度呪を掛け直してもこの母に通じないのは間違いない。
 仕方ないと諦めはしても、不快になるのはまた別の話だ。殺生丸は自身の感情を隠そうともせずに実母を睨みつけた。

「用がないなら早々に去れ」
「用ならあるとも。そう早々と追い出そうとしてくれるな」
「ならばさっさと用件を言え」
「あの娘を娶ったそうだな?」

 息子同様に滅多に表情を作らない彼女が浮かべた笑みは、新しい玩具を見つけた子供のように底意地の悪いものだった。


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 ごめんここで終わり。もし続いたら奇跡。
 殺りんのつもりで書き出したのに、気が付いたら母上が出張ってました。

  FIGHT!(ツナと獄寺)
2009/02/17 ◆ リボーン
 緩まりそうになる気持ちに活を入れる。
 目の前にいるのは、敵。倒すべき敵だ。

 一気に踏み切って間合いを詰めた。突進の勢いをそのまま上乗せして右ストレート。簡単にかわされたけど予想のうちだ。続けて左フックをかます…けど、大して力は込められなかった。精々が牽制程度。
 読まれてたのか天性の勘か、あっさり左フックもかわされる。前倒しになったオレを狙って敵からの攻撃――足を狙われた。そのまま倒しされてたらバックマウントポジションを取られてただろう。けど、オレはちゃんとすかした。

「…っ!」

 慌ててもう一度距離を取る。一旦体勢を整えたかったけど、それは出来なかった。今度は敵から詰めて来たからだ。間髪入れずに右の拳――オレンジの炎を纏った攻撃がやって来る。
 避けられない、だから正面から受けた。腕を眼前でクロスさせる。…5メートルは吹っ飛んだだろうか。何とか倒れずにすんだが、流石にすげぇ攻撃だ。
 一息つく暇もない。敵は更に追撃してくる。今度のパンチは何とか避けて、俺も渾身の一撃をぶち込む!

「…っの!」
「…っぐ…!」

 脇腹にまともに入った感触。敵はとっさに体をくの字に曲げて、オレは――

「十代目っ!? だだ大丈夫ですか!?」

 自分が殴った相手――十代目に駆け寄った。



「獄寺くん…。まだ終わってないと思うんだけど」
「はっ!? あ、すみません! つい!」

 十代目と素手で組み手のお相手をさせて頂いてた、んだが。
 やっぱりオレが十代目と組み手ってムリがあるよな。まず闘志を湧き立たせるのに時間かかるし、敵だって思い込もうとしても中々できないし、一発でも入れちまったらすぐに十代目の心配に走っちまうし。

「やっぱり山本に頼んだ方が良かったかなぁ」
「いけません、十代目。アイツは加減ってもんを知らねぇんですから!」
「本気で組み手するんだから加減も何もないだろ?」
「だからって十代目を打ち身だらけにしていい理由にはならないでしょうが!」
「いや、だから本気でしたから…」
「とにかくダメです!」

 でもさー、なんて言ってるけど、絶対に却下。これだけは譲れねぇ。
 この前十代目と山本が組み手した時は酷かった。素手の十代目と竹刀の山本で散々殴り合って、2人とも打ち身擦り傷でボロボロだ。ったく、いくら十代目が「本気で」って言ったからって限度があるだろうが!

「だって獄寺くんじゃ止まっちゃうだろ。これじゃ組み手の意味が無いよ」
「…鋭意努力します。だからアイツはダメです」
「…分かったよ。それじゃ、もう一回最初から。いい?」
「はい!」

 そして再度、緩まりそうになる気持ちに活を入れる。


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 タイトル、超適当。

  ねないこだれだ(ハリーとキエル)
2009/02/16 ◆ ∀ガンダム
「貴方がこんなにも過保護だなんて知らなかったわ」
「私も自分がこうも過保護だとは知りませんでした」

 きっかけは小さなくしゃみだった。くしゅん、と可愛らしい声を上げた、たったそれだけのこと。
 熱を出しているわけでも、眩暈を起こしたわけでもないのに、キエルは今、自らの執務室から追い出され、仮眠用のソファベッドに横たわらされていた。

「小さなくしゃみをしただけなのよ、それなのに無理矢理休ませるだなんて」
「極寒の地ならばともかく、この空調の行き届いた宮殿でくしゃみをなさるなど、お疲れになられている証拠です」

 本当ならミラン執政官と会議用資料の追い込みをかけているはずの時間だった。だのにハリーが勝手に話を進めてキャンセルしてしまったのだ。会議本番や公式行事などと比べると優先順位の低い執務だけれど、それでも重要な執務の1つに違いは無い。

「今この時期に余計な時間を割いている暇などありませんのに」
「今この時期であるからこそ、ディアナ様のお体は万全であられるべきです」

 ふぅ、と溜息1つ。諦めてキエルはブランケットを被りなおした。これでは水掛け論どころではない、ハリーはキエルがきちんと休むまでこの調子を貫くに違いないのだから。
 それに、この所重要な会議や公式行事が続いていたので、疲れがたまっていたのも事実だった。ソファで横になっていると自然と瞼が重くなってくる。
 だけど、ハリーの言う通りにばかりなるのは癪だったので。キエルはその白い手を、心配性な恋人の右手に添えた。

「キエル?」
「貴方の言う通りに休みますから、1つだけ我侭を言ってもいいですか?」
「執務に戻る以外なら何でも仰ってください」


「手を握っていて下さい。私が眠るまで」


「…それは、困った」
「え?」

 手を繋ぐのがお嫌いだったかしら、と首を傾げるものの、今まで彼が手を繋ぐ行為を嫌がったことはなかったはずだ。ハリーは空いている方の手で口元を隠してしまっているのでどんな表情をしているのか全く見えない。

「ハリー?」
「私も望んでいることを言われてしまっては、我侭になりません」

 もしかして照れてらっしゃるのかしら。キエルは確かめたくて仕方なかったけれど、先んじたハリーの手が彼女の視界を閉ざし、まもなく穏やかな眠りに誘われていった。


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 ハリーはキエル嬢に対しては過保護になってしまうに違いない。

  奥州より愛をこめて・2(幸村と政宗)
2009/02/15 ◆ 戦国BASARA
 この前の続き。
 政宗さま女体化で尚且つ現代パロ。現代はあんまり関係ない。


(shit,)

 その一瞬、状況も背の痛みも忘れ、政宗は己を見下ろす双眸に見惚れた。
 自身が発する炎より熱いものを宿すその目。政宗以外の何も映していない。
 見惚れた事実を認めるのが癪で無理矢理に視線を動かし、そしてようやく己が地面に倒されたのだと知る。
 勝負は幸村に軍配が上がったのだ。

「政宗殿。某の勝ちにございます」
「dammit! その通りだ」

 六爪も二槍もとっくに弾け飛んでいる。得物が無くなっても戦意は消えず、自然と拳が交わされた。殴り、蹴り、絞め、固め、或いは技巧も何も無い動物のような突進も繰り出され、そうして今この体勢になっている。政宗が地面に縫い付けられ、その上を幸村が押さえている、この体勢に。
 いかに政宗が足掻こうとも、もはや形勢逆転は不可能だ。

 不思議と政宗の心は凪いでいた。
 闘いの情熱の名残はある、しかし敗北の屈辱はない。互いに全力を尽くし、魂をも削るような一戦だった。勝負の駆け引きなど考えていられない。ただ一撃一撃に渾身を込めて打ち倒したい、それだけだった。この一撃で仕留めたい、この闘いが永遠に続けばいい、そんな矛盾さえ内包した一戦。
 己が勝つか相手が勝つか、結果を考える余裕すらなかったのだ。

「…おそらく政宗殿が男性であられたなら、今空を仰いでいたのは某であったでしょう」
「Ha,言うじゃねぇか。だがそんなのは関係ねぇ」

 政宗と幸村の力量は拮抗していた。どちらが勝っても、或いは永久に決着がつかなくてもおかしくない闘いだった。では何が勝敗を決したのか?
 ――体力の差、男と女の力の差、だ。

「男だろうと女だろうと関係ねぇ。今ここにいる俺が独眼竜だ。体力の差でお前に負けたと言うならばお前以上に体力を付けて、或いは体力勝負になんぞ持ち込まれる前にお前を倒せるだけの技量を身に付けて、次は俺が勝ってやるさ」

 政宗は激しく蒼い燐光を放ち、その独眼で睨み上げる。もし呪眼と言う物が存在するのなら正しくこれだと幸村は思う。射殺さんとばかりに睨み上げるこの光を魔的と言わずとして何と言う。

「…はい。つまらぬ事を申しました」
「まったくだ」

 事実、その通りなのだろう。今この時は幸村が勝った。だがこの次はどうなるか分からない。1回や2回勝利した程度ではこの独眼竜に打ち勝ったとは思えない。
 この目が。己の敗北を認めながらも決して衰えぬ雷光が。幸村の炎を鎮火させてくれない。それどころか尚強く燃え上がらせる。

(ああ、なんと)

 幸村の無骨な腕で抱き締めたら容易く壊れてしまいそうな細い体でありながら、なんとお強い方なのだ。
 この雷光と独眼の麗人より気高く美しく、そしてお強い方などこの世に存在するはずがない、と幸村は確信する。


 土にまみれていても陰りなどするはずもない気高さこそ、この方のお美しさの象徴であるのだろう。


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 政宗さま女体化パラレルシリーズ。
 体力的に不利な女性の体であってもそれをコンプレックスに思うこともなく、不利も有利も全部ひっくるめて今の自分を誇りに思う。政宗さまはそういう方です。
 …とか言って、自分が女性であることを気にしていた時期もあったりしたら、それはそれで萌えます。生理が来る度に「こんなもん邪魔だ!」って思ってたりとか。

  バレンタインディ・キッス(リボーン/ツナと獄寺)
2009/02/14 ◆ リボーン
 沢田綱吉は悩んでいた。

「…どうしよう、これ…」

 目の前には両手の平に収まるサイズの箱が1つ。ネイビーの包装紙とゴールドのリボンでラッピングされている。
 中身は見えようもないがはっきりしている。甘い甘いチョコレート、それも手作り。

「やっぱりどー考えてもリボーンの入れ知恵だよね…。ああもうリボーンどこ行ってるんだよ…!」

 そのチョコレートはホームルームが始まる前の教室で渡された。日本におけるバレンタインの風習をどう勘違いしたのか、衆人環視の教室で、大声で「手作りチョコレートです十代目、受け取って下さい!」と叫びながら。
 日本の風習に疎いのをいいことにリボーンが適当なことを吹き込んだのは確実だ。困ったことにリボーンの言うことなら何でも素直に受け取る、と言う悪癖があるので、今回もそのせいに違いない。帰宅したら速攻でリボーンに問いたださなきゃ、と綱吉は勇んでいたのだが、こんな日に限ってリボーンは何処かに出掛けている。ランボや奈々に聞いても分からなかった。そもそもランボは奈々から貰ったチョコレートをきゃっきゃと叫びながら喜びはしゃぐのに忙しくて会話にならなかった。

「…どうすればいいんだよ、これ…」

 泳がしていた視線を再びテーブルの上に戻す。数十秒の間に箱が変身しているはずもなく、艶やかなリボンがその身を解かれるのを今か今かと待ちわびていた。
 勢いに押されてとは言え、確かに受け取った物だ。きっちり頂くのが筋と言うもの。だがしかし、綱吉は中々その箱に手が伸ばせないでいた。

「何でオレが獄寺くんからバレンタインチョコレート貰うハメになってるんだよ…」

 男が男からチョコレートを貰う。そしてそのチョコレートを食べる。その行為に特別な意味が無くとも、それは相当に心理的抵抗が伴うものなのだと、綱吉は若干14歳で悟った。

「…どうしよう…」

 もう何回その言葉を呟いたことか。
 とにかくリボーンを問いただして獄寺にどういう出鱈目を吹き込んだのか明らかにする必要がある。早急に。
 何しろバレンタインチョコレートとして貰った物なのだ。早く事情を把握して、獄寺の誤解を解かなければ…

「…お返しとかしなきゃいけないの、オレ…?」

 Xデイは1ヵ月後。
 果たして綱吉の運命や如何に。


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 全然デキてない2人のお話。
 タイトルはあの有名な歌から。キッスも何もない話ですが、どうもいいタイトルが浮かばなかったので。やっつけ仕事ですみません。

 …しまった、今日は土曜日…! 中学校休み…!
 「ホームルーム前に渡した」ってシチュエーションに矛盾が………ま、いっか。適当適当。