この前の続き。
政宗さま女体化で尚且つ現代パロ。現代はあんまり関係ない。
(shit,)
その一瞬、状況も背の痛みも忘れ、政宗は己を見下ろす双眸に見惚れた。
自身が発する炎より熱いものを宿すその目。政宗以外の何も映していない。
見惚れた事実を認めるのが癪で無理矢理に視線を動かし、そしてようやく己が地面に倒されたのだと知る。
勝負は幸村に軍配が上がったのだ。
「政宗殿。某の勝ちにございます」
「dammit! その通りだ」
六爪も二槍もとっくに弾け飛んでいる。得物が無くなっても戦意は消えず、自然と拳が交わされた。殴り、蹴り、絞め、固め、或いは技巧も何も無い動物のような突進も繰り出され、そうして今この体勢になっている。政宗が地面に縫い付けられ、その上を幸村が押さえている、この体勢に。
いかに政宗が足掻こうとも、もはや形勢逆転は不可能だ。
不思議と政宗の心は凪いでいた。
闘いの情熱の名残はある、しかし敗北の屈辱はない。互いに全力を尽くし、魂をも削るような一戦だった。勝負の駆け引きなど考えていられない。ただ一撃一撃に渾身を込めて打ち倒したい、それだけだった。この一撃で仕留めたい、この闘いが永遠に続けばいい、そんな矛盾さえ内包した一戦。
己が勝つか相手が勝つか、結果を考える余裕すらなかったのだ。
「…おそらく政宗殿が男性であられたなら、今空を仰いでいたのは某であったでしょう」
「Ha,言うじゃねぇか。だがそんなのは関係ねぇ」
政宗と幸村の力量は拮抗していた。どちらが勝っても、或いは永久に決着がつかなくてもおかしくない闘いだった。では何が勝敗を決したのか?
――体力の差、男と女の力の差、だ。
「男だろうと女だろうと関係ねぇ。今ここにいる俺が独眼竜だ。体力の差でお前に負けたと言うならばお前以上に体力を付けて、或いは体力勝負になんぞ持ち込まれる前にお前を倒せるだけの技量を身に付けて、次は俺が勝ってやるさ」
政宗は激しく蒼い燐光を放ち、その独眼で睨み上げる。もし呪眼と言う物が存在するのなら正しくこれだと幸村は思う。射殺さんとばかりに睨み上げるこの光を魔的と言わずとして何と言う。
「…はい。つまらぬ事を申しました」
「まったくだ」
事実、その通りなのだろう。今この時は幸村が勝った。だがこの次はどうなるか分からない。1回や2回勝利した程度ではこの独眼竜に打ち勝ったとは思えない。
この目が。己の敗北を認めながらも決して衰えぬ雷光が。幸村の炎を鎮火させてくれない。それどころか尚強く燃え上がらせる。
(ああ、なんと)
幸村の無骨な腕で抱き締めたら容易く壊れてしまいそうな細い体でありながら、なんとお強い方なのだ。
この雷光と独眼の麗人より気高く美しく、そしてお強い方などこの世に存在するはずがない、と幸村は確信する。
土にまみれていても陰りなどするはずもない気高さこそ、この方のお美しさの象徴であるのだろう。
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政宗さま女体化パラレルシリーズ。
体力的に不利な女性の体であってもそれをコンプレックスに思うこともなく、不利も有利も全部ひっくるめて今の自分を誇りに思う。政宗さまはそういう方です。
…とか言って、自分が女性であることを気にしていた時期もあったりしたら、それはそれで萌えます。生理が来る度に「こんなもん邪魔だ!」って思ってたりとか。