指先足先の動きが鈍い。息を吸うたびに鼻の奥が痛い。露出した部分に鳥肌が立っている。乾燥した唇が今にも切れそうだ。顔の筋肉が引きつってる。少しでも熱を発生させようと体が小刻みに震えてる。
つまり集約すると、寒いの一言に尽きる。
「寒いアル」
「寒いですね」
「寒い寒い言うなお前ら、新党滅却すれば火もまた凉しだ。ほら窓の外を見ろ新八、神楽。今日も元気に怪しい政治団体が怪しい演説してるぞ」
「怪しい政治団体の怪しい演説と僕たちが寒いのと何の関係があるんですか。しかも今「新党」って言いましたよね。新しい党でしたよね。新しい党を滅却してどうして火が涼しくなるんです」
「新しい党なんて血気盛んでウザいだけネ、滅却した方が世の為人の為ヨ」
「その通りだ神楽。よし、滅却しに行こう」
「そうアルな。ちょっとは体が温まるかもしれないネ」
「待たんかお前らァァァ! 要するにアレか、俺たちは暖房器具のない寒い部屋の中で震えてるのに何で外では怪しい政治団体があんなに元気に走り回ってるんだって理不尽にムカついただけかオイィィィ!!」
「新八、世の中何でもかんでも正直に言葉にしたらいいってもんじゃないんだぞ」
「そうヨ、外面は優しく、心は般若。これが上手く世の中を渡るコツね」
「あんたら外面が成功したためしがないだろうが! いつも心が般若になったら速攻で般若になって殴りこみに行ってるだろうがよ!」
「あーもー新八、お前って本当にアレだな。小姑の素質たっぷりだな」
「将来志村家に嫁ぐ嫁さんは大変ネ。『あらやだ嫁子さん、こんなに埃が。ちゃんと掃除してるの?』」
「『いやだ、何この味。志村家伝来の味噌汁はこんな味じゃないわ。嫁子さんってばいつまでたってもこんな簡単な料理も覚えられないんだから』」
「何で僕が小姑にならないといけないんですか! 志村家に嫁いでくるってことは僕のお嫁さんでしょ!? 僕の将来の妻でしょ!?」
「新八にお嫁さんが来るよりお妙に嫁が来る方が早いんじゃね?」
「ありうるね。姐御下手な男より漢前よ」
「ありえないから! 姉上にお嫁さんが来るなんてありえないから! 姉上は嫁ぐ方なの!」
「お妙が嫁ぐなんてことになったら凄いんだろーなー。重箱の隅を顕微鏡で観察するレベルで相手の男の粗探しまくるんだぜ、きっと」
「ちょっとでもヘマしたらアレよ、『あらやだお義兄さん、こんなに埃が。ちゃんと掃除してるの?』」
「小姑の時と同じこと言ってんじゃねぇお前らァァァ!! いい加減黙らねぇと外に放りだすぞコルァァァ!!!」
「よし、神楽。新八が騒ぎまくったおかげでちょっとは室内温度が上がったような気がするぞ」
「本当ネ。家事とツッコミとアイドルオタクしか能のないメガネもたまには役に立って良かったヨ」
「家事とツッコミとアイドルオタクしか能のないメガネって何!? 僕が家事しないとすぐ腐海の森にするだらけ虫2匹の分際で何様!?」
「あーもう黙っていいぞ新八ー。これ以上騒がれると今度はお前を滅却したくなりそうだ」
「いつの間にか外の新党いなくなってるネ。ちっ」
「ちって何! 今度は僕って何なの!? 本当に滅却するつもりなのかよあんたら酷すぎだよ!」
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オチなし。
つーかオチが作れない。
タイトルは「銀魂風のタイトルを作ろうとして失敗しました」といういい見本。