ぱっつぁんとチャイナが幼児化して銀さんがお父さん状態になっているという謎設定。
男には耐えねばならない時がある。
…って言うけどさぁ。今はその「耐えねばならない」時じゃないよね? もうギブアップしてもいいよね? さすがの銀さんももう無理です勘弁してください。
「まってよかぐらちゃん」
「またないアル。もーちょっとアルー」
待つ待たないじゃないですよお前ら。はいそこ、髪の毛引っ張らない。はいそっち、足首に全体重掛けない。
あのね、銀さんも大人の男ですからね。幼児2人を抱えるのなんて簡単ですよ。簡単ですけどね。さすがに関節に全体重を掛けられたら痛いし、髪の毛を引っ張られると痛いんですよ。人体には鍛えようのない場所ってのがありまして、お前らがダメージを与えているのはモロにそこな訳ですよ。
ていうか何でお前ら2人して俺を登ろうとしてるの。先に銀さんの頭の上まで到達出来たら勝ちって何それ。登られてる俺の意思は丸無視? 痛いんですけど。重いんですけど。
それと登りかけで落ちるのもやめて下さい。床に激突する前にキャッチするの大変なんです。とっさに抱えるのって結構難しいんですよ?
「やったネ。とーちょーアルー」
…とか何とか心の中で愚痴ってる間にチャイナの方が頭のてっぺんまで登りきった模様。勝利に酔いしれてます。っだだだだ、だから髪の毛引っ張るなっての!
「まってかぐらちゃんー」
俺の足首を痛めつけていたメガネは現在太もも上に乗っております。うん太ももの方がまだマシだけど、もうちょっと体重を掛ける場所を考えて欲しいなー俺の股関節が悲鳴を上げてるなー。
「あーはいはい登頂おめでとー。それじゃあもう銀さん動いていい? テレビつけたいんだけど。穴野アナのお天気ニュース見なきゃだから」
「だめアル。うごかざることやまのごとしネ」
「ぼくまだのぼってないからだめです」
わーかぐらちゃんってばむずかしいことばをしってるねー。
…。
完全に傍観者をしてるぱっつぁんの姉貴は「そうしてると本当にお父さんみたいねぇ」とか他人事丸出しで呟いてやがるし。すいません本当に勘弁して下さい。
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某姐御がものすごい幼児絵描いたから…
ティーカップではなくマグカップ。飴色ではなくこげ茶色。その日の午後のお茶の時間、彼の主であり恋人でもある女性が手ずから入れてくれた飲み物は、とても珍しいことに紅茶ではなかった。
「これは…、ホットチョコレート、ですか?」
「はい。チョコレートはお嫌いでしたか?」
「好き好んでいるわけではありませんが、いえ、特に嫌いと言う程でもありません」
「なら良かった!」
どうぞ、と視線で促され、勧められるままに口に運ぶ。今までホットチョコレートを口にする機会もなかったので知らなかったが、チョコレートをそのまま液体にしたような物ではないらしい。牛乳か何かを加えて口当たりを滑らかにし、またブランデーを加えて香り付けもしているようだった。
濃い味のチョコレートに合うようにお茶うけのお菓子はチュロスを添えている。一口、二口とハリーが口にするのを見て、キエルは満足したように息を吐いた。
「貴女はホットチョコレートがお好きだったのでしょうか?」
「え?」
「とても幸せそうに、飲んでいらっしゃる」
「ええと、それは…」
キエルが笑顔を綻ばせたのは自分がマグカップに口に付けた時ではなく、ハリーが飲んだのを見届けたからだ。的外れの指摘をしていると分かった上でハリーはそう問いかけた。どうやらこのホットチョコレートを自分が飲むのには何らかの意味があるらしい。
言おうか言わまいか、キエルは少しの間視線を彷徨わせて躊躇っているようだった。絶対に言ってはいけないことならばこのような態度は取らない。言ってはいけない、ではなく、言うのが恥ずかしい、という態度だ。そんなところも可愛らしい、と内心1人で惚気つつ、キエルがちらちらと視線を向けている方向の1つにハリーも目を向けてみる。
実のところ、ハリーには心当たりがあった。先日地球に降りた折、リリ嬢との歓談で出た話題だ。だがその時ハリーは傍に控えていたのではなく、偶然通りかかって断片を耳にしただけだった。おそらくキエルはハリーが耳にしたことに気付いていないだろう。
知らないふりをして彼女を困らせたい訳ではない。照れている彼女が可愛らしいから黙っているだなんて、そんな意地の悪いことを私がする筈がないだろう。
もしかしたら、という予想はあるが、あくまで予想でしかない。はっきりとした理由を知りたいから彼女の答えを待っているだけだ。
己に言い訳をしつつ、彼女の言を待つ。たまには紅茶以外の飲み物も気分が変わっていいかもしれないと思ったのです、と言い訳じみた言葉から始まった説明は、ハリーの表情を緩ませるのに十分すぎる威力を発揮したのだった。
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日本のバレンタインの習慣が何らかの形で残っていたのをリリ嬢が誰かから聞いて、それをリリ嬢がキエルとの歓談中に話題として出して…という流れ。