小話帳

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 基本的に書きなぐったブツの収納場所。オチのない話も有り。
 Fate(原作が18禁)とエロっちぃ話はネタバレ機能で隠してます。

  君は僕の輝ける星(獄寺とツナ)
2010/04/20 ◆ リボーン
 半分だけ開けた窓から春の風が入ってきていた。
 書類が数枚、風に浚われて床に落ちている。獄寺はそれらを拾ってペーパーウェイトで抑えた。
 子供の拳大の白い半球にオレンジの筋が一本だけ入っている。このペーパーウェイトは先日獄寺が綱吉に頼まれて買ってきた物だった。綱吉に合わせるには安直な色合いかとも思ったが、1番似合う色合いだと思っているし、品もいい物だったのでこれに決めた。

 机の上の書類は半分をペーパーウェイトが、半分を突っ伏した綱吉が抑えている。お茶淹れて来ます、と退出して戻ってくるまでの5分間、たったそれだけの時間で眠ってしまっていた。

「…」

 差し込む陽光に色素の薄い髪が反射して、きらきらと光っているようだった。
 綱吉の色素は日本人にしてはとても薄い。イタリア人だった初代の血を引いているのだから純粋な日本人ではないにしても、初代から綱吉までに交わった血は日本人しかいない筈で、パーセンテージで言えばイタリアの血は一桁まで薄まっている筈だ。先祖からの遺伝と言うよりも初代からの隔世遺伝と言うべきかもしれない。
 その、きらきらした姿を、獄寺は眩しそうに目を細めて眺めた。

 起こすべきかこのまま寝かせておくべきか悩む。休憩しているのだから仮眠しても問題ない。仮眠するならせめてソファに寝転んだ方がいい。せっかく眠っているのを起こすのは忍びない。お茶が冷める。淹れなおせばいい。せめて何か上に掛けて差し上げるべきだ。掛けられるような物が近くに無い。隣りの寝室まで毛布を取りに行けばいい。
 …少しでも目を離すのが惜しい。

「…十代目」

 ん、と声にもなっていない息の音が漏れた。まだ綱吉は夢の中でまどろんでいる。獄寺は肩を揺さぶろうと手を伸ばした。
 きらきらした光が弱くなった。太陽が雲に隠れてしまったからだった。獄寺は伸ばしかけた手を止めた。もう一度十代目、と呼びかけると、今度はうん、と発音された声が返ってきた。

「…ん、…寝てた?」
「はい。お眠りになられるなら、せめてソファで横になって下さい」
「や、寝るつもりは無かったんだけど…」

 まだ眠そうに目を擦る綱吉に、程よく冷めたお茶を差し出した。
 いつの間にか太陽は雲から脱出していて、またきらきらととても綺麗に光っていた。


    =================

 星の方が語呂が良かったので星にしましたけど、星っつーか、太陽っぽいですね。

  Blue,Blue,Deep Sky(ツナと獄寺)
2010/04/19 ◆ リボーン
 それは多分、聞かなかった方が良かった会話。



 空は快晴。雲ひとつ無いいい天気。もうちょっとしたら直射日光が厳しくなるから、多分今が日向ぼっこを楽しむ最高の季節だろう。
 眩しいけど暖かい。暑いけど気持ちいい。誰が考えたのかしらないけど、晴の守護者ってほんとにいいネーミングだと思う。こういう天気のこういう気持ちいい気風の人たちばっかりだから。
 …あれ。でも、未来の正一って確か…晴だったよな。…晴って言うか…滅茶苦茶インドアの研究者タイプだったけど…
 …細かいことは気にしない。うん。そうそう。それを言うなら獄寺くんも晴属性を持ってるしね!

「…あー」

 無理矢理どうでもいいことを考えてたのに、思考がそっちに戻ってしまった。
 獄寺隼人。おれのクラスメート。自称おれの右腕。嵐の守護者。
 補習を食らってたおれと一緒に帰るべく、教室で待ってた。

「…もーどりたくないなー…」

 補習に持っていったのは辞書と筆箱だけだ。教科書が詰まった鞄は教室に置きっぱなしにしておいた。いつまでも屋上にいる訳にはいかないし、帰るなら鞄を取りに行かないといけないんだけど。
 けど。

『何でお前らってさー、あんなにツナにべったりな訳?』

 途中でトイレに行った。補習してた特別教室とトイレの間に教室があった。だから通りかかった。
 別に立ち聞きするつもりなんかなかった。自分の噂話なんか聞きたくないし。

『べったりって何だよ、べったりってのはよ。お前ら喧嘩売ってんのか?』
『違ぇって。んじゃ言い直す。お前ら何であんなにツナが好きなわけ?』

 クラスメートその1と、獄寺くん。お前「ら」って言うのは山本も含めて言ってたのかもしれない。その時山本はおれと仲良く補習中だったけどね。
 幸か不幸か。獄寺くんはその時廊下に背を向けていて、だからおれが通りかかったのに気付いてなかった。

『お前ら分かってねぇんだよ。十代目がどれだけ偉大な方か理解したら、お前ら全員十代目に平伏すぜ』
『ンな大袈裟な。ツナがいい奴ってのは知ってるけどさー』

 もう40分くらい前のことだから、今教室に戻っても、もうこの話はしてないと思う。けど何となく戻りたくなかった。多分獄寺くんは、今か今かっておれが帰ってくるのを待ってるんだと思うけど。
 …別に鞄を取りに行かなくてもいっか。一晩学校に置きっぱなしになるけど…別に持って帰ったって予習とかする訳じゃないし。そうだ、このまま帰ってしまおう。

「っと」

 勢いを付けて起き上がった。階下に向かうドアを閉める直前に何となく振り返った空は、やっぱり青空。
 嵐なんかどこにも入る隙間が無いくらい、憎たらしいくらいの晴れ渡った空だった。



    ====================

 大きな大きな空の下なのに、僕はとてもちっぽけで。

  ???
 火を近づける。
 息を吸って風を通す。
 火が点く。
 煙が喉を通過する。
 肺を満たす。
 その味を確かめる。
 白い煙を吐き出す。
 舌にぴりりと刺激が残る。

 感想は、苦いと辛いと、舌が痛い。
 とても美味しいなんて思えなかったけど、慣れたらそれが欲しくなるんだろうか。
 彼とのキスのように。


   =============

 リハビリのつもりで書き始めたんですが、消化不良…。
 誰のつもりで書いたのかも不明(それってリハビリ…?)。

 カテゴリはタバコを吸うキャラが出てくる作品で設定しておきました。
 バサラならむねさまと幸村、りぼーんなら獄寺とツナ、銀魂なら土方か高杉と誰か。
 好きな人で脳内変換よろしく。

  殺人考察・2(獄寺と山本)
2009/08/28 ◆ リボーン
 もう大丈夫だから、と言った顔は蒼白のままだった。
 どう見ても大丈夫な顔じゃなかったが、納得したフリをした。
 これはオレがいてもどうしようもない問題で、そしてオレがいない方が楽になれるだろうから。


「よ」
「…」

 偶然通りがかったような顔をしているが、オレが出て来るのを待ってたのがバレバレだ。うざってーが今日ばかりは仕方ない。おう、と適当な返事をして、不承不承並んで歩き出した。

「どうしてる?」
「吐きっぱなしだ、相当キてる。今晩中に落ち着くのはムリだな」
「そっか」

 誰が、どうして。この会話に主語は必要ない。2人とも見ているから。
 撃ち合いの最中、十代目が撃った弾が、敵の頭を貫通するのを。

「…お前はどうだった」
「ん? どうって?」
「初めて人を殺した時のことだよ」
「ああ、それか。実を言うと覚えてない」
「…お前、野球バカが極まって記憶障害まで起こしてるのかよ」
「いやそーじゃなくて」

 野球バカはホントだけどさ。そう苦笑する。

「混戦状態の斬り合いだったんだ。で、全部終わってから『全員死んでます』って言われた。だから覚えてないんだよ、オレがいつ人を殺した一太刀を斬ったのか。オレが殺したのは間違いないんだけど、決定的な一撃がどれか分かんねぇの」
「…何つーか、てめぇらしいな。完全に入り込んでたから殺す殺さないの躊躇もなかったんだろ、てめぇ」
「ま、そーだろーな。そーゆー訳で、気が付いたら人殺しになってました、だ。さすがに自分が人殺しだって分かった後は結構キたけど、決定的な自覚がない分、今のツナ程じゃなかった」
「…」
「だからオレの話を聞いても、参考にゃできないぜ?」
「うっせ」

 そもそも他人の話で参考に出来る問題なんだろうか。
 人が人を殺す状況も理由もそんなのは千差万別だ、同じ状況・同じ理由で殺しても、人殺しの事実の受け止め方はその人によってまた変わってくる。もし山本が十代目と同じ状況で人を殺しても、山本と十代目は別の結果になってるんじゃないか。
 じゃあ、今の十代目をお助けするにはどうすればいいんだ。
 十代目はどんな人間でも全部抱え込む大きな心をお持ちで、だからこそ誰よりも人殺しを厭っていた。十代目が厭うならオレや山本がそれを負うのは当然のことなのに、オレたちに背負わせてしまっていると心苦しく思って下さっていたのに。
 今日間違いなく、十代目は人を殺した。

「…オレたちが下手に口を挟むことじゃないんだろ、たぶん」
「…」

 もうそうするしかないって分かっててもコイツに言われるのは癪に障る。
 くそ、とオレは意味のない舌打ちを1つ、まずいと分かってるタバコに火を点けた。


   ==========

 タイトルを先日書いた1と合わせて「殺人考察(前)(後)」にしようかと思いましたが、さすがにそれだけは自重しました(笑)
 パクりにも程がある…ってのもありますが、答えが出てないのに(後)って付けるのはどうかと思いましたので。

  殺人考察(ツナと獄寺)
2009/08/24 ◆ リボーン
 平静を装うのは成功した。
 家までは何とか持ちこたえた。
 部屋に戻ったら、すぐに吐いた。



「…あー…」

 気持ち悪い。胃の中なんてとっくに空っぽなのに嘔吐感は全然おさまってくれない。ひっきりなしに頭をガンガン殴られてるような感じ。勿論腹も痛いし、吐く時におかしな体勢で固まってたから、腰も変に痛い。胃液で喉が焼かれたみたいだ。ひりひりする。気持ち悪い。
 中学生の頃から散々闘い続けてきたお陰で痛みを意識から切り離す方法なんてとっくに身に付けてるのに、今回ばかりはそれができない。痛みを切り離したらもっと酷いものがもっと酷くなっておれを襲いに来る。でも予想よりもずっとマシだった。

 もっともっと辛くなると思ってた。その場ですぐに倒れて全部吐き出して気を失って1週間も目覚めない、みたいな。その間ずっと悪夢にうなされるんじゃないかって。
 悪夢を見るのはこれからだろうけど、少なくともその場では吐かなかったし、その他大勢の部下にはバレない程度には平静を装うこともできた。おれって結構演技派だったんだ、なんてバカみたいなことを考える余裕もあった。
 この程度で済んでることに喜ぶよりも、この程度で済んでることにショックだった。

「十代目」
「…うん」

 差し出された水を一気に飲み干した。水差しごと持って来てくれたお陰ですぐにお代わりできた。でもそれもまた吐いた。そろそろ止まらないと脱水症状とか起きるんじゃないか? ゲーゲー言いながら余計なことばかり考える。銃弾1発。骨を砕く衝撃も肉を斬る感触もない。指をほんの少し動かしただけ、それで飛び出した銃弾が頭蓋骨を貫通した。たったそれだけ。

「獄寺くん」
「はい」
「幻滅する?」
「まさか」
「君ってホント、おれのこと甘やかしてるよね」
「そうですか? そんなつもりはありませんが」
「ははっ」

 獄寺くんも山本もとっくに経験済みなのに、おれだけ未だに経験してなかった。それはおれがずっと嫌がってたからだけど、おれが嫌がってるからおれにそれだけはさせまいと獄寺くんが奔走してたからだ。文句1つも言わないで。これのどこが甘やかしてないんだよ。

「覚悟、してたつもりだったけど。全然だったな」


 おれは今日、初めて、人を殺した。


    ===========

 「LAST CROSS」の後の話っぽい。

 最後にリボーンを書いてから半年近くが経過してました…。なんて怖ろしい放置っぷり…!