獄寺女体化で生理ネタ。
苦手な人もいるだろうから隠します。
目が覚めたら誰もいなくなってた。
「…」
痛みは薬で抑えられるけど、腰のダルさはどうしたっておさまらない。腹を温めたらマシになるっつったのは誰だったか。十代目のお母さまだったか。ハルだったかもしれない。
覚えのない膝掛けが下腹に掛けられてた。寝てる間にかけられたのか、寝る前に掛けられたのか。薬を飲んでからの記憶が曖昧だ。情けない。
「…1時間も寝てたのか」
まだ寝ていたいと体は叫んでいるが無視した。テーブルの上に魔法瓶とメモを見つける。ハルの字だ。
『あったかいカフェオレ作っておきました。あたたまりますよ!』
相変わらず女女した丸っこい字だ。ハルが入れたからには相当甘ったるいカフェオレなんだろう。甘いのは苦手だが、今は素直に好意に甘えることにした。
喉を伝って体内へ熱が伝わっていくのは気持ちいい。…けど、やっぱり甘ったるい。アイツも笹川も何でこんな甘いのとかケーキとか食えるんだろう。ケーキなんて砂糖の塊とかわらねぇじゃん。
魔法瓶の中は3杯分くらい入ってた。とりあえず一杯分だけ貰う。つか一気に全部飲み干せって言われても無理だし。甘ったるいのはキツイけど体は確かにあたたまるから、しんどくなった時に飲んだらちょっとは回復できそうだ。
(さっさと戻らねぇと…。十代目に心配かけちまう)
ああ、違うか。もうとっくに掛けちまってるか。…バカみてぇ。
わざわざハルがオレの部屋に来て薬飲ませて膝掛けを掛けてカフェオレまで用意して帰るなんて、十代目がハルに頼んだからに決まってる。
十代目が直接オレに休むように言ってもオレは絶対大丈夫だって言うから、…オレが断りにくい奴にわざわざ声を掛けたに決まってるじゃないか。
(…めんどくせぇ。こんなもん、来なくなればいい)
どうせ子供なんざ産む予定もつもりも更々ないんだ、いっそ子宮ごと取っ払ったらったら楽なのに。…けど、もし本当に子宮摘出したら、十代目が怒る。絶対に怒る。
オレにとっては十代目のお傍に付いて十代目の為に働くのが何より1番の優先順位なのに、十代目はオレがオレの体を適当にしたら怒る。もっと自分のことを大切にしろって。
オレのことを思って怒ってくださってるからムゲにはできないけど、その優しさに惚れたのは間違いないけど、でも時々、面倒に思う。
(だってオレは「女」なんていらない)
女は力が弱い。体力もない。生理なんて面倒なのも来るし、こと「女」の要素でオレに必要なものなんて一つもない。
…こういう時だ。ハルや笹川を羨ましく思うのは。
オレには「女」なんて邪魔でしかないのに、あいつらは「女」なところで十代目のお役に立ってる。
マフィアのことは聞かされてないけど、聞かされてないなりに十代目のことを察して、十代目が安心して帰ってこれる場所を作って、守ってる。十代目のお母さまと同じように。
(ああ、それじゃあムリだな)
オレには「女」な所で十代目のお役に立つなんて絶対にムリだな。帰りを待つよりも一緒に飛び込んでいくしかできないオレには。
「女」なんてオレには何の意味もないんだから、だからさっさと生理なんざ終わっちまえ。
自棄っぱちに自分の体を呪っても早く終わったりするはずもなくて、結局いつも通り5日間で終わった。
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年齢は…精々高校生って頃かな。
ここまで自分の性別を嫌ってるとなるとね。20歳近くになるとそれなりに自分の中で折り合いをつけるようになっていきますから。
前に書いた「デンジャラスビューティー」とは特に繋がりはありません。
何もかも暴力で支配していた時代なんてとっくに終わっているし、マフィアって言っても今は「多少荒っぽいこともする多角経営の企業」みたいなものだ。でもって、パソコンが普及して紙の需要が減ったって言っても、結局重要な契約書や決裁書には直筆のサインが必要なのは変わらない。
そういうわけで、ボンゴレの次期十代目ことオレの机の上には、結構な数の書類が積み上げられていた。
「十代目、どうぞ」
「ん、ありがと」
あまり根をつめすぎても効率が悪くなりますから、って言われて休憩を取ることにした。差し出されたのはわざわざ日本から取り寄せたらしい緑茶だ。それは母さんが食事の時に出してくれるのと同じ味で、同じ味を出せるようになるまで練習したんだろうなって、すごく嬉しく思う。
「今のうちに片付けておきますね。こっちが決済済みの書類ですよね?」
「うん、そう。右半分とちょっとってとこかな…先は長いなぁ…」
「ファイトっす、十代目!」
大半がサインを入れるだけまで整えもらってるって言っても、それでも内容を見ないでサインばっかりするわけにもいかない。結局全部にちゃんと目を通さないといけないわけで、今日は朝からこの作業ばっかりしてるから、オレの集中力なんてはとっくに切れていた。面倒な書類仕事に加えて、面倒で余計な話を持ち込まれたばっかりだったりするから、机に突っ伏したまま寝てしまおうか、とまで思ってしまう。
「あれ、十代目。こちらの束は?」
「あ」
決済済みの書類を回収してくれてた獄寺くんが「それ」に気付いた。卒業アルバムみたいに分厚い表紙と対照的な薄い中身。わざわざ日本風の形式に誂えている辺りがオレへの嫌がらせにしか思えない。ああ、こんな風習さっさと廃れてしまえばいいのに。
「置いといてくれていいから。…どうせ捨てるし」
「そうですか? でもこれ、何の書類なんでしょう? 十代目にお目通りが必要な物は全部オレを通すようにしてるはずなんですけど…」
「そんな大袈裟なものじゃないよ。リボーンが持ってきたものだし」
「リボーンさんが!?」
あ、しまった。逆効果だ。
獄寺くんがリボーンに全幅の信頼を寄せてるのを忘れてた。リボーンさんがお持ちしたのなら大変な書類なんじゃないですかって考えてるのが丸分かり。だから変なこと言われる前に、素直に白状することにした。
「だからオレにはいらない物なんだって。…見合い写真だから、それ」
「…はい?」
オレの好きな人がオレの見合い写真を抱えてる図って、一体何の嫌がらせなんだろう。
そんなことをぼんやり考えてたから、オレはこの時、獄寺くんの微妙な動揺に気付けないでいた。
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2から直接話が繋がってます。
更に言うなら6に続く予定。…は未定…。
幼少の頃から養育どころか一年に何度も会わなかった。殺生丸が元服を迎えた頃からは10年に一度も会わなくなった。冥道へ赴く目的で宮を訪れた一件以来、顔を合わしたことも会いたいと思ったこともない。
殺生丸にとって母とは「自分を産んだ女」という認識しかなかった。そして母もまた殺生丸を「自分が産んだ子」という認識しか持っていないことも分かっていた。母子としての愛情などお互いの間には全く存在せず、故に殺生丸は母が何故この屋敷に下りて来たのか分からなかった。その、用件を告げるまで。
「あの娘を娶ったそうだな?」
不快を通り越して剣呑ささえ纏う。並みの妖怪程度なら一睨みで肝を潰されてしまいかねない強烈な邪眼。だがさすがは実母と言うべきか、ふん、と鼻で笑って流してみせる。かつて西国を統治した大妖怪の正室であり、そして今西国を統治する大妖怪の母である彼女もまた、並々ならぬ胆力と妖力の持ち主であった。
「何だその目は。まさか私がお前に説教をする為に来たのだとでも思ったのか?」
「では何の用だ」
「ふん、この馬鹿息子めが」
目的は違うのかもしれないが、この母が重臣などから陳述されているのは間違いなかった。
先代に続いて殺生丸までもが人間の娘を娶る――、それは重臣にとってとても許せるものではない。まして先に正室との間に跡継の殺生丸を儲けていた先代と違い、殺生丸はただの一人も室すら迎えていない。その状況で人間の娘を妻とするとは。
殺生丸は母が重臣に請われて提言に来たのかと思った、しかし母はそれを鼻で笑う。では一体何の用だと言うのか。殺生丸に母が自分に会いに来る用など思いつかない。
「あの娘は…今はおらぬか。まあいい。いずれ会うこともあろう。或いは会わないまま死ぬか」
「…」
妖怪の寿命は長く、人の一生は短い。妖怪にとって10年とは「たった」と称される時間だが、人間には「そんなにも」と称される年月だ。それだけの隔たりを持つ生き物同士。共に過ごせる時間は人間にとっては一生でも妖怪にとってはごく僅かな時間――。
「まったく、変なところが父親に似たものだな、お前は。人間を娶るなど――一昔前のお前ならば、考えることすらなかっただろうに」
たった一瞬、ふ、と声が和らいだ。それは何かを懐かしむようでもあり、僅かに母としての慕情を感じさせる色すら内包していた。
だがそのような表情を見せたのも一瞬、すぐに皮肉げなものと戻る。ではな、と呟くのと同時、優雅に裾を翻し、殺生丸に背を向けていた。
「お前が誰を娶ろうが私の知ったことではないよ。お前の好きに生きるがいい」
「…無論だ。言われるまでもない」
「ふん、全く可愛げのない」
ああそうだ、と、本当に思い出した、と言う風で、母は息子に振り向いた。
「何の用か、と聞いたな? 知己を訪ねるのに近くを寄ったからの」
ふと気が向いただけだ、と言う。その言葉は本心からに違いない。そして、「好きに生きろ」と告げた思いも。
幼少の頃ならともかく、今更「母」を察したとて、今までの関係も感情も変えようがない。そして母も変えることを望んでいるわけではないと、そこまで気付いてしまっている。
故に殺生丸はただ一言。
「二度と来るな」
「は、生意気を言う」
ざ、と土を踏む音と共に、銀月が1つ空を駆けた。
――或いはかの娘に会いに来たのかもしれなかった。それでも、地に残った銀月はその軌跡を見送ることすらしなかった。
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やっと最終巻読みました。
男が女に着物贈るってそーゆー意味か、それとも虫除けを狙ってか。